キュナード・ラインの伝統と革新
同社が紡いできた伝統と革新的なサービスはこれからも受け継がれていく。
構成=クルーズ編集部
文=藤原暢子
「クイーン・エリザベス2」(QE2)に初めて乗った時は、別の次元の客船に乗った感覚だった。それまで近代的な大型船や小型のラグジュアリー船にも乗ってきたのに、何かが違う。
どこを見ても美術館みたいで、乗客やクルーの動きはまるで映画の中の人のように見え、自分だけが傍観者のように感じてしまう。些細なことさえ、どれも「キュナード」らしくて、常に雰囲気に飲み込まれてしまっていた。
ようやく落ち着いて「キュナードの船旅」ができたのは、「クイーン・メリー2」(QM2)の大西洋横断だった。無寄港で日数もたっぷりあるので乗客の方々ともゆったりと話ができるし、クルーも丁寧ながら親しみのある対応やおしゃべりをしてくれる。
夜はボールルームやカジノ、バーを探険する。寄港地がないから夜遊びもできるし、お昼にデッキやライブラリーで居眠りもできる。無寄港のクルーズの良さに気づかされた船旅でもあった。
大西洋横断の黄金時代、キュナードの船で旅していた人々もこんな時間を過ごしていたのだろうなと思いを馳せる。
その後、「クイーン・ヴィクトリア」(QV)、「クイーン・エリザベス」(QE)も就航して時は3女王の時代に。
今はやっとどの船でもすっと溶け込めるようになった。毎回、いろいろな楽しみがあるが、キュナードの船ではやはりドレスだ。
男性は着慣れたタキシードで、女性のエスコートをする。女性は自分に似合う色やフォルムを十分理解していて、自信たっぷりにドレスを着こなしている。アカデミー賞のレッドカーペットのようで、フォーマルの夜は、つい女性陣のドレスに目が釘付けになる。
制服に身を包んだクルーにサービスを受けながら、華やかな夜を過ごす。150年以上も変わらないこの船上の雰囲気。現代的な旅をしながら、キュナードはタイムトリップにも誘ってくれる。