逆転の発想で新企画、にっぽん丸の新イベント
楽しむためのアイデアが光る
●APPレイトナイトステージ ●ソーシャル・ディスタンス・ディスコ
新しく登場した船内イベントの一つに「ソーシャル・ディスタンス・ディスコ」(上写真)がある。いかにも「今」を感じさせるキャッチーなネーミングだ。にっぽん丸ゼネラルマネージャーの星野啓太さんに、どんなイベントなのか、どういった経緯で生まれた企画なのかなど、お話を伺った。
「基本的には、座ったまま上半身だけで踊りましょう、というイベントです」(参加人数によっては立ち上がっての踊りにすることも)。
会場はドルフィンホールで、23時以降開催。参加者は十分な距離を取り、椅子に着席して、スタッフの振り付けに合わせて上半身を動かす。立ち上がれないというルールがあるものの、かなり盛り上がるそう。
「感染防止に配慮して、フィットネス系イベントの開催が限定されているので、体を動かす催しが喜ばれるのだと思います。何より、こういう難しい時期に乗船されるお客さまの多くは、積極的に楽しもうとしていらっしゃると感じます」。
興に乗った結果、つい立ち上がってしまったら、その場合は「ディスタンス・ポリス」に警笛で注意され、連行(!)される。ポリスとは言ってもトナカイの着ぐるみを着たスタッフで、空いている後方のスペースに誘導され、そこで踊ることになる。
ディスコの様子はホール内のカメラで各客室のテレビに中継されるので、その場にいなくても雰囲気を楽しめる。人気イベントとはいえやはり遅い時間帯なので、今のところいわゆる三密が発生するほど人が集まったことはない。
楽しい雰囲気を壊さずにルールを徹底してもらうために、このようにさまざまな工夫が凝らされている。アイデアを出し合って演出を作り込んでいくことを、スタッフたちも楽しんでいるそうだ。
「コロナ禍以前は、ディスコタイムには手をつないで輪になったりするのが楽しかったのですが、それができない今、やる意味はないんじゃないかという議論もあったんです。でもこのご時世だからこそ、お客さまとスタッフが同じ場所と時間を共有できること自体が、意義のあることなのだと感じています」。
このソーシャル・ディスタンス・ディスコは、メインショーの終演後に行われる、にっぽん丸専属バンド「アスール★プラ★プティ★」(以下、APP)によるレイトナイトステージの一部。ディスコの前には、彼らの演奏を存分に堪能できる。
レイトナイトステージは、かつてはソシアル(社交)ダンスを楽しんでいた時間帯だった。しかし感染防止の観点からそれができなくなり、代わりにダンスをしない人が音楽そのものを目当てに足を運んでくれるようになった。海外旅行にいけない状況が続く中で日本船に乗るようになった人など、客層も多様化している。それを機に、ライブの曲目を再考することにした。
「昭和40年生まれの私と同じか少し下の世代のお客さまも多くなっています。これまで専属バンドのレパートリーは懐メロが主流でしたが、そこにこだわる必要もないだろう、と考えました」。
そこで思い切ってジャズや日本のニューミュージックなど幅広いジャンルから楽曲を選び、APPメンバーに対して特訓を行った。ジャズなどはフィリピン人である彼らにとってはなじみの薄いジャンルの上、近年の日本のポピュラーソングは洋楽などよりコード進行が難解となっている。特に日本の曲については、中途半端な演奏では偽物感が出てしまうという危惧もあった。
「ですので『原曲に忠実な演奏を完璧にマスターしてほしい。各自の個性を乗せるならそれが大前提』と伝えました。時間はかかりましたが、もともと音楽レベルの高い彼らは、歌詞の意味も理解した上で心のこもった演奏を少しずつお聞かせできるようになってきています」。
現在、APPは日本語曲だけの1時間のショーも開催しており、予想以上にお客さまに楽しんでいただけているとのことだ。