飛鳥Ⅱが描く、洋上の別世界へ
和食出身の総料理長の真骨頂
今回、3泊4日の「年末悠々 四日市・駿河湾クルーズ」に参加した。宝箱のように楽しみが満載の飛鳥Ⅱのクルーズ。料理のバラエティーの豊かさと品質も定評の一つだ。
夕に夜に毎日通ったのが、リドガーデンの「アスカバル」。まず目に飛び込んできたのが、ハモネロにセットされた巨大な生ハムの原木。目の前で好きなだけカットしてもらったプロシュートを、熟成した赤ワインとともにいただく。豊富に種類をそろえたチーズや、和食の肴も勢ぞろい。イタリアのバールやベネチアのバーカロ、パリのオードブルバーで食前食後酒を楽しんでいる気分。海外旅行がままならない今、最高にぜいたくな時間を楽しめた。
ディナーは「フォーシーズン・ダイニングルーム」でゆったりと。初日はアミューズ「キャビアのカクテル」に始まる洋食コース。料理、器、盛り付けが絵画のように美しく、料理人の技と情熱が極まる。2日目は「白子豆腐」「フォアグラとあんぽ柿の最中」などの八寸から始まる和食フルコース。3日目はあんこうを使った「冬の酒粕と蕪の香味海鮮鍋」や「のどぐろの炊き込みご飯」などこの時期ならではの味わいが並んだ「飛鳥会席」。いずれも総料理長の真骨頂が遺憾なく発揮されていた。
岡本崇総料理長は、12代目にして飛鳥クルーズ初の和食出身の総料理長だ。初代「飛鳥」の「海彦」で絶品の鮨を握っていたため、乗客の中には昔からのファンも多い。厳選された食材がまるで芸術のようにドラマ仕立てで呈される。和洋どちらも、うっとりするような世界へと誘われる夜宴となった。
さらに、日本やイタリア、フランスの料理とともに、種類豊富にそろえたお酒とのマリアージュ(サービスの華麗さから、日本酒もあえてマリアージュと呼びたい)が満喫できた。ディナーメニューには本日のおすすめの飲み物が紹介され、洋食には飛鳥プレミアムハウスワイン「KENZO ESTATE」、日本料理には高清水の秘伝の技で醸した「秘伝富貴仕込み“加藤均”」や、飛鳥Ⅱ限定醸造プレミアム日本酒「天狗舞 純米大吟醸」が。そのほか、料理に合わせた日本酒や焼酎、ワインのラインナップは、ソムリエの確かな味覚で選んだものばかりだった。
●食のエンターテインメント
今回は年末ということで特別なショーも開催された。60キログラムを超えるマグロの解体ショーだ。開始30分前から多くの乗客がアスカプラザの特設ステージを囲み、期待の高さをうかがわせた。
和食料理長が長い包丁をひと振りするごとに、会場が「おおーっ!」という歓声に包まれる。大トロ、中トロ、カマトロ、赤身、珍しい脳天まで、詳細な解説付きで、ずらり目の前に並んでいく。これらはその夜のディナーはもちろん、翌昼食の握り鮨でもふるまわれた。さめやらぬショーの興奮とともに口に運べば、おいしさもひとしおだ。