清水港から行く
静岡の魅力を探す旅

清水港から行く 静岡の魅力を探す旅
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2022.02.28
東西に長くのびる静岡県のほぼ中央に位置する清水港。
1899年に開港し、神戸港、長崎港と並び、日本三大美港と称される港は、
2021年に国際旅客ターミナルが完成し、新たな施設が続々と整備されている。
雄大な富士山の眺めを楽しみながら、静岡の歴史や文化にふれ、ご当地グルメも満喫。
清水港から多彩なスポットを訪ねて、新たな発見を楽しもう。

写真=篠田 勇 文=粟屋千春

 

●信仰と芸術の源 富士山の眺望に魅せられる

 

清水港への入港間近、右手前方に視線を向けると、富士山の勇壮な姿がゆっくりと近づいてくる。朝日が山頂を照らし始め、濃いオレンジ色が少しずつ薄くなっていく様子を船上から眺めていると、清水港に訪れたことを実感できるだろう。

 

標高3776メートル、日本一の高さを誇る霊峰・富士は、2013年に世界文化遺産に登録された。激しい噴火を繰り返してきた富士山は、神が宿る山としておそれられ、古くから信仰の対象として崇められてきた。富士山はおそれ敬われるとともに、万葉集で詠まれ、葛飾北斎や歌川広重らが浮世絵に描くなど、多くの芸術家に影響を与えてきた存在でもある。

 

そんな富士山の雄大さと美しさを満喫するなら「三保松原」を訪れたい。約5キロの海岸に推定3万本もの青々とした松が生い茂り、波打ち際から仰ぎ見る富士山は圧巻。寄せては返す波の音も心地よい。

海、松、富士山を一度に見渡せる三保松原。一角には天女伝説で知られる羽衣の松がある
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海、松、富士山を一度に見渡せる三保松原。一角には天女伝説で知られる羽衣の松がある

 

三保松原を訪れたら「みほしるべ」にも立ち寄ろう。富士山と三保松原の美しい景観を楽しめる映像シアターや、羽衣伝説、三保松原と芸術作品などの関わりについて展示するなど、より深くこの地について知ることができる。ショップでは三保松原の松を使ったグッズなども販売しているので、ユニークな土産探しにぴったりだ。

「みほしるべ」の通り土間は、全面ガラス張りで三保松原と施設をつなぐ廊下になっている 
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「みほしるべ」の通り土間は、全面ガラス張りで三保松原と施設をつなぐ廊下になっている 
「みほしるべ」には「絹本著色富士曼荼羅図」のレプリカを展示
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「みほしるべ」には「絹本著色富士曼荼羅図」のレプリカを展示

 

海岸から富士山の眺めを堪能したら、少し高い場所からの眺望も楽しみたいところ。「日本平夢テラス」は標高300メートルの丘陵地にある絶景スポット。屋外に造られた一周200メートルの展望回廊からは、富士山はもちろん、視線を下に向ければ駿河湾や三保松原、そして清水港までも見渡すことができる。日本平の緑の向こうにブルーの海が広がる景色は爽快感にあふれ、息をのむほど美しい。

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「日本平夢テラス」の展望フロア。360度の大パノラマを楽しめる
設計は隈研吾建築都市設計事務所が担当。県産木材を使い、自然と調和しているのが特徴

 

●英傑ゆかりの地を訪ね、お茶文化にふれる

 

静岡にゆかりのある人物といえば、江戸幕府を開いた徳川家康。戦国時代から江戸時代に活躍した家康は、幼少期と晩年を駿府(現・静岡市)で過ごしたことはよく知られている。

 

現在、公園として親しまれている駿府城跡は、約400年前に家康が天下統一という夢の実現に向け、拠点となる駿府城を構えた地。家康は三重の堀に囲まれた城を築いたが、今も当時と変わらず豊かな水をたたえた二ノ丸堀が残り、そこを遊覧船の「葵舟」でめぐることができる。東御門橋から出発し、巽櫓や坤櫓、石垣を眺めたり、橋の下をくぐったり、堀をのんびり一周。水辺から見上げる櫓は迫力があり、春先には満開の桜が石垣から堀にせり出し、水面に映る幻想的で華やかな景色も楽しめるという。

 

日本平には駿府城で75歳の生涯を閉じた家康が埋葬された「久能山東照宮」がある。随所に彫刻や飾り金具が施された朱塗りの社殿は豪華絢爛。その当時の技術を駆使した建築に目を奪われてしまう。

 

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葵舟は一周約40分。舟内は畳になっており、 靴を脱いでゆったりくつろぎながら遊覧できる
葵舟に乗れば、江戸時代にタイムトリップした気分に
大工棟梁の中井正清の最晩年の傑作といわれる「久能山東照宮」。社殿は国宝に指定されている
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大工棟梁の中井正清の最晩年の傑作といわれる「久能山東照宮」。社殿は国宝に指定されている
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ロープウェイが日本平山頂と久能山東照宮を約5分で結ぶ
リニューアルした日本平にあるロープウェイの駅

 

ところで家康は息子・秀忠に将軍職を譲り、駿府城で隠居生活を送ったが、その際、静岡のお茶を楽しんでいたという。江戸時代には御用茶として献上されていた。

 

清水のお茶専門店「小松園」も、お茶の奥深さを感じられる一軒。「お茶は1年で何度も収穫できますが、4月~5月下旬に摘み取る新茶が栄養もたっぷりでおすすめです」と代表の牧田充哉さん。深蒸し茶や煎茶など、種類によって甘味や旨みが異なるので、飲み比べて好みを探すのが、お茶選びのコツなのだとか。静岡の歴史と文化に思いをめぐらせながら、お茶を味わうのもいい。

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日本平の山頂に向かう途中には斜面に広がる茶畑の風景に出会える
提携農園で育てた静岡茶を中心に販売する「小松園」の牧田充哉さん。8年ほど前から客船が寄港する日はふ頭に出店。「乗客の皆さんとの交流は楽しいですね」と牧田さん
種類によって甘味や旨みが異なる
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