シルバーシー・クルーズで体感する食文化プロジェクト
ラグジュアリー客船が提案する現地の食体験
「Sea and Land Taste」(S.A.L.T)が開始する。東南アジア航海中の「シルバー・ミューズ」で
同プロジェクトを各国のジャーナリストが体験した。その様子を紹介する。
写真・文=藤原暢子
寄港地の食文化を知って深く旅をする
シルバーシー・クルーズが「シルバー・ムーン」から始める新プロジェクト「S.A.L.T」(Sea and Land Tasteの頭文字を取った名称)は、寄港地の市場、ワイナリー、レストラン訪問などの体験や、船上では地元のゲストシェフや料理専門家による講義、デモンストレーション、料理教室などを行う。同船は「シルバー・ミューズ」とほぼ同型船だが、同プロジェクトのために専用のラボ・キッチン兼レストランを設置予定だ。
今回は東南アジアでのトライアルだったので、日本人には親しみがあるかもしれないが(それでも講義や現地では驚くことばかりだった)、シルバー・ムーンが就航するエリアであれば同様のプロジェクトが用意される。例えば、イタリアの小さな村を訪ね、パスタやスイーツ作りなども実現する。
このプロジェクトは食通だけでなく、郷土料理を軸に寄港地の人々や歴史、文化を知るという目的がある。観光地をめぐるだけでなく、その地を深く知りながら旅をするシルバーシー・クルーズの新しいチャレンジだ(もちろん通常の寄港地ツアーも存在する)。
プロジェクトの開始はシルバー・ムーンからだが、2021年就航の「シルバー・ドーン」にも同様の施設ができる。小さな港を細やかにめぐるシルバーシーの客船でこのプロジェクトを実施するには事前の調査や準備にとてつもない労力が必要となる。白羽の矢が立ったのは、米国人で旅行・料理ライターのアダム・サッチ氏。同社の乗客は旅慣れた富裕層なので、適材の講師、レストラン、もちろん衛生面や意外性などすべてを満たしたものを探し、すでに世界中をめぐっている。
快適な空間やサービス、最高級の食をすでに擁するシルバーシーにとって、自分たちが目指す、新たな“ラグジュアリー”は、「寄港地を深く理解し、豊かな旅を提供する」ということなのだ。
【Philippines フィリピン】
部族の郷土料理から最新レストランまで
中国やスペインの影響を受けているフィリピン料理。主食は米だが地域により多用される魚介や肉など素材は変わる。米国でフィリピン料理店を持ち、料理本『I am Pilipino』の著者、ニコル・ポンセカ氏が地域性、歴史を踏まえつつ、船内や寄港地でフィリピンの食を解説した。
【Malaysia マレーシア】
屋台の朝食に料理学校での実習も
マレー系、中国系、インド系と多民族国家のマレーシア。スパイスを多く使うマレー料理、ココナツミルクやカレーが代表的なインド料理、マレー人が発展させたニョニャ料理、地元の素材や多文化に影響を受けた中国料理など、料理も素材もとにかく種類が豊富だ。
【Singapore シンガポール】
本格的な伝統食を学び人気の屋台料理も堪能
シンガポールのフード・ライター、アネット・タン氏が乗船。現代の多忙な人々の外食事情、そしてマレーシア同様、多彩な料理文化がありつつも、経済発展で世界中の有名レストランが出店し、食通の国となった現状を紹介。同時に幼少時に食べた伝統的な家庭料理の実演も行った。