「航海するすべての人に神のご加護を」
客船誕生の瞬間、華やかなる命名式
「ロイヤル・プリンセス」の命名式には、英国のロイヤル・ファミリーが登場。
伝統と革新を重んじる英国らしい式典となった。
(この記事はCRUISE2013年9月号に掲載したものです。)
6月だというのに冷たい風が吹きつける英国サウサンプトンの岸壁に、約2000人が続々と集まった。プリンセス・クルーズ5年ぶりとなる新造船「ロイヤル・プリンセス」の命名式の参加者だ。
同船の命名者はケンブリッジ公爵夫人キャサリン妃。第一子の出産を翌月に控えた彼女が本当に出席するのか、当日まではっきりとはわからなかった。関係者に尋ねると、「体調がよければ」との答え。ちなみに、初代のロイヤル・プリンセスの命名者はダイアナ元皇太子妃が務めており、2代にわたって“ロイヤルな”プリンセスたちが命名者となった。
さすがロイヤル・ファミリーが命名者とあって、式典のドレスコードは「デイドレス」、そして「帽子着用が望ましい」。豪華な飾りの付いたつばの広い帽子をかぶった女性もいたが、若い女性は黒いコンパクトな帽子の人が多く、最近のトレンドを感じさせた。
ポーツマス英国海兵隊軍楽隊と、アイルランド近衛連隊のバグパイプ演奏という、まさに英国らしい伝統的なスタイルで式典が開幕。
岸壁に横付けした黒塗りの車からキャサリン妃が降り立つと、会場からどよめきが起こった。そこにいるだけで人々が引きつけられる──。やはりロイヤル・ファミリーは特別な存在なのだ。
式典では英国の女性ポップ歌手によるライブ・パフォーマンスのほか、参加者の頭上に張られた弦の長さが300メートルにも及ぶ「アースハープ」という弦楽器の演奏も。「伝統」と「革新」が共生するところも英国らしい。
ウインチェスター司教による祝福のあと、キャサリン妃が壇上に上がり、船名を命名。「ロイヤル・プリンセスと、この船で航海するすべての人に神のご加護を」。キャサリン妃がテープを切ると、ネブカドネザル・サイズ(フルボトル20本分、15リットル入り)のモエ・エ・シャンドンのボトルが船体にぶつかり、勢いよく割れた。会場に青と白の紙吹雪が舞う。そしてここに、新しいプリンセスが誕生した。
(2013年6月13日 サウサンプトン)