クロワジー・ヨーロッパ
欧州式客船で大河メコンへ、新たなるアジアに触れる
居心地の良さはリバー船ならでは
(この記事はCRUISE2018年4月号に掲載したものです。)
水路で国境を越えるのはワクワクする。流域に住む人々の素朴な暮らしに触れ、心を洗われる。東南アジア最長を誇るメコン川を下りカンボジアからベトナムへ。リバークルーズならではの魅力が詰まった旅をレポートしたい。
乗船したのは欧州各地でリバークルーズの実績があるクロワジー・ヨーロッパの「インドシナⅡ」だ。2017年9月に登場したばかりの新造船である。同社はアジアではメコン川クルーズに力を入れており、本船で5隻目となる。客室数31、乗客定員62人。既存の4隻よりもキャパシティーは大きいが、それでも巨大な外洋クルーズ船と比べると圧倒的にコンパクトだ。普段はアンコールワット観光を含むシェムリアップ~ホーチミンの11日間だが、今回はプレビュークルーズで特別に5日間乗船した。
■アットホームな船内
今回、出発地となったのはプノンペンだ。カンボジアの首都であり、近年成田からの直行便が就航して以来、日本からもアクセスしやすくなった。まずはこの街に2泊する。といっても、泊まるのは船内だ。空港に着いたその足で港へ向かい、乗船手続きを行った。
船が停泊しているのは街の中心部で、便利な立地だった。目の前はもうにぎやかな通りで、徒歩圏内に飲食店などが多数立ち並ぶ。プノンペン屈指の人気スポット「ナイトバザール」も至近距離だ。夕方の到着だったから、まずはバザール内を軽く散策して異国情緒を味わった。フリータイムが長く、自分のペースで楽しめる。
終日プノンペン滞在となる2日目は、船主催の市内観光ツアーに参加した。王宮とトゥール・スレン刑務所を見学したのだが、両者は対極的な存在だと感じた。極彩色に輝くきらびやかな王宮とは裏腹に、刑務所は物悲しい雰囲気が漂う。ここはかつての内戦時代に、クメール・ルージュによって拷問、虐殺が行われた場所だ。同国の歴史を知るうえでは避けては通れない、いわば負の遺産といえる。
この日の夜には、デッキでレセプション・パーティーが開かれた。乾杯のあと、船長をはじめ乗組員一同の紹介があった。インドシナⅡには総勢29人のカンボジア人クルーと、フランス人のクルーズディレクターが乗船している。
ディナー後には、早くも顔見知りになった乗客同士でトゥクトゥク(三輪タクシー)に分乗し、市内のバーへ飲みに出かけたりもした。大きな船ではないぶん、人と人との距離が近い。アットホームな雰囲気だから、すれ違えばお互い笑顔であいさつを交わす。あっという間に冗談を言い合うような仲間がたくさんできたのだった。