にっぽん丸で過ごす夏、「にっぽん丸ビーチ」の休暇
●安心を確認できるスムーズなチェックイン
雨が降りそうな重たい雲の下でも、横浜港大さん橋に着くと、旅情を誘われるような軽い開放感にあふれていた。ここからにっぽん丸に乗船し、2泊3日で伊勢志摩国立公園内にある三重県東部の英虞湾を訪れ、プライベートビーチを満喫する「にっぽん丸 夏のしま・しまクルーズ」に出発だ。ご当地のおいしいものが散りばめられる企画にも期待が高まる。
乗船する直前にターミナルでPCR検査を受けたが、スタッフの丁寧な案内でスムーズに進んだ。無事に乗船して、2階のステートルーム、スーペリアツインにチェックイン。2022年に改装したばかりで、白が基調のインテリアが、モダンさとゆったり感を感じさせる快適な空間だ。室内に空気清浄機が置かれた気遣いもうれしい。荷物をほどき、船が出港する夕刻前に、さっそく船内を一めぐりしてみることにした。
7階の後方プールサイドにある「リドテラス」に行くと、人気のハンバーガーやゴディバのチョコレートドリンク・ショコリキサーを味わっている人がすでにちらほら。ここでは無料の軽食サービスを楽しめる。後でいただこうと思いながら、6階に下り、ラウンジ「海」に落ち着いて「ウェルカムフリーフロー」タイムを楽しんだ。これも飲み放題のフリードリンクで、スパークリングワインのほか、南高梅ジュース、青森のりんごストレートジュースなどと季節ごとに変わるのだという。
いよいよ出港の時間、タグボートに先導されてにっぽん丸は横浜大さん橋の岸をゆっくりと離れ、力強く進んでいく。空は相変わらず重いグレーで雨も降っていたが、ベイブリッジの下を通る時には、デッキに出て写真を撮る乗客もいた。しばらく進むと、右手に富士山の姿がうっすらと浮かんできた。遠い西の方角に日没前の光がかすかにあり、雲に覆われながらも、富士山のシルエットを眺めることができたのはうれしかった。
その日のディナーは2階のメインダイニング「瑞穂」で和食のコース。各テーブルが透明ボードで仕切られ、クルーがゲストの着席位置をQRコードでチェックするなど、感染症対策が万全だった。隣のテーブル席は一人で乗船したというご婦人で、距離に気をつけつつ、食事時、ひとときの会話を楽しんだ。この日は、日本各地で大雨を降らした低気圧の影響で、夜、船が太平洋に出ると海がうねり始めた。強力なスタビライザーがついた船体もさすがに揺れたので、こんな時は波のリズムに身体を預けることにして、翌日に備えて早めに眠りについた。
●目覚めると英虞湾、そして上陸へ
翌朝、天気はすっかり回復していた。見晴らす海はどこまでも穏やかだ。シルエットになった遠い陸地が近づいてくると、もう三重県東部の志摩半島だった。7階の広々としたスポーツデッキでは、青空の下、ラジオ体操に参加している人がたくさん。朝の光と澄んだ空気がとても気持ちいい。
船は緑深い陸地に囲まれた静かな英虞湾の入り口、浜島という小さな港の沖合にアンカーを下ろした。今日は英虞湾のあるビーチを貸し切って「にっぽん丸ビーチ」をオープンするという。これまでもにっぽん丸は、農園や、ある時は島を丸ごと貸し切りにして、こだわりのイベントを行ってきたというので、期待が高まる。
お昼前、通船に乗って浜島の港に向かった。海上で振り返ると、にっぽん丸の全体像がよく見えた。青い海によく映える白と濃紺色のツートンカラー、赤いファンネルがアクセントのにっぽん丸は、近年、白色のクルーズ船が多い中、凛とした個性と優雅な雰囲気をたたえている。まさに客船らしいたたずまいだ。