飛鳥Ⅱの新たなクルーズで探る
瀬戸内の美しき景観と豊かな食
クルーズの2日目に終日航海日があるのは大層理想的である。遅めに起床し旅気分に浸れるからだ。のんびりとインターナショナルビュッフェで朝食を兼ねた昼食を取った。自分ではなくアクリル板の向こうにいるクルーが無理なく食べ切れる量のみ皿に盛ってくれる。検温、消毒、マスク着用も徹底しており、感染症予防や食物廃棄削減を推進する形式に安心感を抱いた。また、ドリンクメニューに無いカフェラテを快く用意してくれた配慮もうれしい。毎朝カフェラテを飲むのが習慣だからだ。小さいながら大切な習慣を守ることは旅疲れを増やさない秘訣である。感心したのは、プールデッキ含む広いスペースのどこに座っていても迅速に間違えずドリンクなどを持ってきてくれること。こうしたいわゆる「ノーと言わない」細やかなサービスは下船するまで続くこととなる。
食後、海を見ようと船尾へ向かった。遥か向こうに三重県の伊勢志摩を望みながら、まるで青の絵の具を溶かしたように鮮やかな太平洋の海に魅入った。さて、今日のプランはパームコートやビスタラウンジで飛鳥Ⅱのオリジナルハーブティやカクテルを楽しみ、幸田浩子さん(オペラ歌手)のコンサートを鑑賞することに絞ろう。幸田さんはきっとオペラの名曲を散りばめた海の情緒あふれるコンサートをプレゼントしてくれるはずである。果たしてその通りになった。日本のみならず世界の海景色が眼前に広がっていくような、想像力を掻き立てられる歌声の余韻とともに眠りに落ちた。
●見て、味わって、五感を満たす食の1日
3日目は「食彩の1日」が催された。瀬戸内含めこのクルーズで巡る土地ならではの食材を使った料理や飲み物が、ランチ、スナック、ディナーとしてふんだんに供される贅沢な1日である。早速朝一番からうれしいサプライズがあった。フォーシーズン・ダイニングルームの和朝食に広島県の江田島で獲れた生しらすが付いていたのだ。生しらすは実のところ地元でも滅多に出回らないごちそうである。ふくよかな食感のしらすのおかげで食欲倍増。食彩の1日への興味や好奇心もますます湧いてきた。
早速メイン会場ともいうべきリドカフェ&リドガーデンへ向かい、「広島県産レモンのクレープ包み」を食べてみる。
クレープに使用しているジャムのレモンは5日目のしまなみ探訪クルーズで巡ることとなる生口島の瀬戸田町が産地だ。なつかしの瀬戸田レモンに顔がほころんでしまう。香川県産のデコポンジュースで喉をうるおし、次なる目当て「瀬戸内食材ご紹介コーナー」を回遊した。各産地の食材生産者と直接話し、料理を楽しむ物産展のような趣向が楽しいコーナーだ。もちろんどの食材も美味な料理に姿を変えて、この日だけでなく後日のランチやディナーにも登場することになっている。
各ブースでの丁寧な説明により、高品質な食材がどのように作られているのか学ぶことができた。山口県の塩田跡地で育てた車海老は、自然に近い環境を活かすことによる味わい深さが魅力とのこと。愛媛県宇和島の深海真鯛は、鯛にとって最適な環境が整った宇和海で成長している。広島県の六穀豚は良質の穀物を食べて育ち、徳島県の阿波尾鶏は10年間もの改良努力により誕生したという。高知県の鰻は仁淀川の清く美しい地下水で育ったもので、ほどよい脂身と歯ごたえが自慢だという。どの食材も豊かな自然環境を活かし最高級の品質を実現していることが分かる。それら食材で作られた鰻丼、鶏丼、真鯛のカルパッチョなどを、眼前に広がる青々とした土佐湾の海景色を見ながら味わった。もちろん、おともとして山口地ビールの瀬戸内ヴァイツェン(クラフトビール)を飲み、デザートに高知県産ゆずのアイスを食べることも忘れない。生産者の思いの込もった料理に舌鼓を打つとともに、故郷瀬戸内で上質の食材が生産されていることに誇りを感じた1日となった。