誰をも魅了する、至極の洋上宮殿「セブンシーズ・スプレンダー」
完璧なラグジュアリー“リージェント体験”を
2020年初頭の就航直後の取材から改めて紹介する。
写真=マイク・ルワジ(Mike Louagie) 文=藤原暢子
居心地の良さも兼ね備える不思議
取材やプライベートで客船に乗船するたびに、撮った写真は日付と船名を書いて、客船写真用のハードディスクに保存している。「2020年2月 セブンシーズ スプレンダー」という名のフォルダを開く。1枚1枚写真を見ながら、「こんなに華麗で心躍る空間に、1年5カ月近く誰も足を踏み入れられなかったのか……」とため息が出た。
完成後、2クルーズのみを行ったこの新たな船は、今年9月から英国一周クルーズを手始めに運航を開始する。世界的に厳しい時期を経て、世にも美しいこの船が本格的に乗客を迎える日が、やっとくるのだ。
就航前からかなり精巧な完成予想図を見ていたが、その優美さは実際に乗り込んでこそ真に体感できた。中型船に分類される約5万トンなのに、どこも広々としていて、すべてに余裕がある。大理石やチーク、高級資材を各所に惜しげもなく使い、すべてが美しいが、主張が強いわけではなく、バランスが実に良い。ただ、時に想像もしなかった装飾やインテリアに出会ってはっとする。
それをきっかけにいろいろなところを真剣に見ていくと、踊り場の手すりなど細部の細部に至るまでデザインされていて、“洋上の宮殿”という通称が改めてしっくりくる。
この時の取材は長年の親友であり、船専門の写真家と組んで撮影したが、お互い船内のあちこちに夢中になってはぐれてしまうので、落ち合うのは夕食の時というありさまだった。
写真を任せられたので私は“体験”に重きを置くことができた。ライブラリーのさまざまな椅子の座り心地を試してみたり、ピカソやミロから現代アーティストの作品の数々(!)を堪能したり、500あるというクリスタル製のシャンデリアをていねいに見て回ったりした。
そんな体験の合間には、入れたてのコーヒーや軽食が供される「コーヒー・コネクション」でひと休み。同船から外のデッキにも席が配置されたので、1日に何度となく利用した。上層階まで行かずとも、潮風に当たりながら休憩できるのがいい。
姉妹船「セブンシーズ エクスプローラー」とほぼ同型だが、内装の色味はこちらの船が落ち着いている。