にっぽん丸モーリシャスプレシャスクルーズ
滞在型クルーズに見る新たなスタイルの可能性
にっぽん丸がモーリシャスに行くという知らせが届いたのは、2022年に入ってからだった。何より驚いたのは48日間の長期クルーズという情報だった。その頃は国内クルーズは運航しているものの、海外クルーズはショートクルーズさえ運航されていない時期だった。自分の乗船が決まってからも、果たして本当に運航されるだろうかと半信半疑の日々が続いた。
この疑いがすっかり晴れたのは、2022年12月15日、出航日の横浜港大さん橋で、商船三井客船の上野友督社長が「いってらっしゃい」と大きな声であいさつをした、その時である。
このかけ声を号令にしてにっぽん丸はゆっくりと離岸した。平日にもかかわらず大さん橋は想像以上の見送りの人たちであふれていた。これから48日間の船旅に出る。この感覚はいつ以来だろうか。ベイブリッジを抜ける際に反響する汽笛の和音、船首で風を切ると頬が痛むような日本の寒さ、遠ざかる大さん橋ではブルーのライトアップが始まっていた。
最初の寄港地は石垣島だった。わずか3日間の航海をしただけですでに最高気温は20度近くにまで上昇し、乗客は横浜で身を包んでいたコートを脱ぎ捨て、羽織り物ひとつで寄港地散策に繰り出した。
楽しい寄港地のひとときを経て、石垣島出港日の夜に船内のメインホールで出国審査を受けた。乗船証とパスポートを見せるだけの審査は至極スムーズに進み、いよいよにっぽん丸の海外クルーズがスタートした。
海外の寄港地はシンガポール、モルディブ、モーリシャス、マダガスカル、そして復路にもう一度シンガポールに立ち寄る。まさにインド洋に浮かぶ宝石のような島々をめぐる航路だ。一番の特徴は全ての寄港地で1泊以上停泊をすること。特にクルーズ名にもなっているモーリシャスでは3泊4日の滞在が予定されており、1865平方キロメートルという東京都と同じくらいの大きさの島全体をくまなく見て回ることもできる。さらにクルーズ中にはクリスマスや年越し、ロングクルーズ恒例のテーマナイトもある。今回の航路では赤道直下を通航するので、竜王や乙姫に通過の許しを請う赤道祭も開催される。これぞイベント目白押しのロングクルーズ、日本船の海外クルーズの完全復活を感じた。
(上写真)「天国はモーリシャスを模して創られた」という言葉がある。この絶景を前にすれば、誰もがその言葉に納得してしまうだろう