【乗船レポート】「海を近くに感じる」
NCL、10年ぶりの新型客船「ノルウェージャンプリマ」
インフィニティ・プールや海に面したレストランなど、
屋外デッキが充実した客船で味わう、「海を感じる」喜びとは。
ひょっとしたら私は、気づかないうちに天国にいるのではないだろうか……?
写真を撮りながら、ふとそんな錯覚に陥った。まぶしいほど白いビーチに、エメラルドグリーンの海、そして思い思いに海に浮かぶ乗客たち。ノルウェージャンクルーズライン(NCL)の新造船「ノルウェージャン プリマ」で訪れた同社のプライベート・アイランド「グレートスターラップケイ」では、コロナ禍の影響はどこふく風、カリブ海らしい天国のような美しさが広がっていた。
その沖合には、しばしのわが家、ノルウェージャン プリマが浮かんでいる。同船はNCLが約10年ぶりに発表したクラス「プリマクラス」の第一船で、今後同型船が5隻も就航する予定だ。いわば6人姉妹の長女は、イタリア人アーティストのマヌエル・ディ・リタ氏がデザインした、大胆なイラストを身にまとっていた。ひと際目をひく船体に見守られながら、のんびりとカリブの海で遊ぶ休日……悪いわけがない。
船体イラストのみならず、船型もユニークだ。海面を割るかのように突き出た船首。スマートかつ背が高い印象なのは、他のNCL客船の流れをくんでいるようだ。そして最大の特徴は船尾には円形のデッキがそびえること。船型からも、新しい時代の客船であることが容易に想像できる。
構造面でいえば、この客船はエンジンを中央部に持ってくるというチャレンジを行っている。それにより、船尾の円形のデッキを可能にした。円形の空間にはバーやカフェを配し、海を近くに感じられるウォーターフロントエリアとしている。突き出たような船首に関しては、航行中に波の抵抗を減らすことで、燃費を抑え、環境への負荷を減らすという。
ノルウェージャン プリマは、ユニークで新しいデザインを採用しているだけではない。そこには確固としたスピリットと、NCLが目指す未来が凝縮されている。
すなわち、より海を近くに感じ、船旅ならではの良さを満喫すること。そして好みに合わせ、自由気ままにクルーズを楽しむこと。
久々のカリブ海を満喫しながら、NCLからそんなメッセージを受け取ったような気がした。
カリブ海で大型客船に乗った経験がある人は、「本当に洋上にいるのだろうか」という気になったことがあるかもしれない。揺れもほとんど感じず、陸上の施設も顔負けの大型施設が充実していて、窓際に行かない限り洋上にいることを忘れる……そんな経験だ。
ノルウェージャン プリマは、その逆を行くような新造船だ。14万 3535トンの大型ながら、水平線が望める場が多く、海の気配が身近だ。「ああ海っていいな」と思える瞬間が、一日に何度も訪れる。
それを象徴するのが8デッキの「オーシャンブルバード」。多くの大型客船が、上部に屋外エリアをまとめていることが多いのに対し、この船は上部に加え、中層階にも4000平方メートルを超す、広々とした屋外デッキを確保している。
ひとたび屋外デッキに出ると、アートが展示された「ザ・コンコース」から右舷左舷にインフィニティ・プールとデッキチェアを備えるエリア、そして飲食ができるスペースまで、多彩な施設が次々に現れる。
さらに特筆すべきは、その傍らにさまざまなスタイルのソファやベッド、イスが配されていることだ。鳥かごのように吊り下げられたチェア、カラフルなソファ、カバナのようにカーテンで区切られたソファスペースにバーのスツールまで。そこには気分に合わせて居場所を選ぶ楽しみがある。
眺めていると、ベッドですやすや眠る人、テーブルを囲んで大笑いするグループ、リモートワーク中なのかパソコンと向き合う人まで、皆思い思いの過ごし方をしている。人目につきにくいソファもあるので、“隠れ家”が好きな人にもうってつけだ。
同船が誇るのは、NCL史上最大の屋外エリアとスペースレシオ。乗船したクルーズはカリブ海就航直後で比較的混んでいたが、それでも決してイス取りゲームにはならなかった。むしろカリブ海の最高の天気のもと、誰も座っていない素敵なソファが並ぶので、ついつい「ちょっと一休み……」が増えてしまう。誰もが自分らしい居場所が見つかる船と言えよう。
しかもこのオーシャンブルーバードは、飲食の選択肢も多い。洋上初の試みである、11ものショップが入るフードコート「インダルジ・フードホール」も広い屋外テラスを確保。そのほかイタリア料理レストラン「オンダ バイ スカルペッタ」など3つのスペシャリティー・レストランにも屋外席が。潮風を感じ、夕陽を眺めながらのロマンチックなディナーも可能だ。