八代港/熊本県「受け継がれるレガシーと恵みの海に出会う旅へ」
【特集】美しき港町へ

八代港/熊本県「受け継がれるレガシーと恵みの海に出会う旅へ」 【特集】美しき港町へ
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2023.03.30
九州西岸におけるクルーズの国際的な拠点が「くまモンポート八代」。
港からは県都の熊本や天草の入り口となる上天草、
レトロな街・山鹿といった見どころへいずれも車で70分ほど。
足を延ばしその土地に時を超えて息づく風物や工芸の技を満喫しよう。
写真=中田浩資 文=大西千夏
日本最強の城という定評もある熊本城。熊本県伝統工芸館からも大天守、小天守のこの壮観
熊本・八代
〝一国二城〟の熊本藩で
武士が愛した肥後象がんと
県民グルメの馬肉料理を体感

天草諸島が浮かぶ八代海に面し、九州西岸の中央に位置する八代港。物流や国際貿易の拠点として発展してきた同港に2020年、誕生したのが「くまモンポート八代」だ。世界最大の22万トン級の客船を受け入れ可能で、2023年には「クイーン・エリザベス」が寄港予定。旅客ターミナルに隣接し、84体ものくまモンがお目見えする、「くまモンパーク」があるのは熊本ならではだ。

世界最大6メートルのビッグくまモンが迎えてくれる「くまモンポート八代」
CRUISE GALLERY
世界最大6メートルのビッグくまモンが迎えてくれる「くまモンポート八代」
「にっぽん丸」見送り時の様子
CRUISE GALLERY
「にっぽん丸」見送り時の様子

八代は昔から要地だった。その事実を物語る名所が「八代城跡」。一国一城が原則の江戸時代に、「熊本城」のほか唯一「八代城」は、特例で存続が許された。薩摩藩などの対外勢力に備えた、というのが定説だ。のちに名将・細川忠興や家老松井家が城主となり、明治まで存続した。

 

日本三名城の1つ、「熊本城」ももちろん必見。熊本地震からの復旧が進み、2021年には、よみがえった天守閣の特別公開がスタート。内部展示も刷新された。城は1607年に加藤清正が築き、やがて細川氏の居城となって明治に至る。6度も屈折する連続枡形など、防御に優れた造りだ。

本丸の石垣と内堀が残る八代城跡。約200本のソメイヨシノを有する、花見の名所でもある
CRUISE GALLERY
本丸の石垣と内堀が残る八代城跡。約200本のソメイヨシノを有する、花見の名所でもある

城下町・熊本のレガシーには、江戸時代から続く「肥後象がん」もある。鉄砲鍛冶が、銃身や刀つばの飾りとして施したのが起源で、武士文化の1つ。鉄に純金や純銀を金づちで打ち込んではめ、その表面に多様な柄を彫るものだ。

 

「昔、象がんを施した刀つば、鉄砲やキセルは、もう日常にないもの。ですから、より現代の生活の中で使うものを作っています」と話すのは、熊本市内の老舗「光助」の4代目、大住裕司さん。

 

アクセサリーや名刺入れなどが人気の店内には、華麗な文鎮も。多くの工程をへて、耐久性とともにしっとりと黒をまとった鉄の表面で、気品をたたえ、金の柄が際立つ。武士を魅了したその美しさは、今も人の心を奪う。「光助」では「肥後象がん体験」で、ペンダントヘッドなども作れる。

 

「光助」は1874年創業。肥後象がんの文鎮「牡丹と唐草」の二重唐草は難度が高い意匠
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「光助」は1874年創業。肥後象がんの文鎮「牡丹と唐草」の二重唐草は難度が高い意匠
象がん体験はくまモンバッチやストラップなど選べ、仕上げはお店がしてくれる

肥後象がんをはじめ県には多彩な伝統工芸がある。その約90品目を一堂に展示するのが「熊本県伝統工芸館」。外国人にも人気の「小代焼」や「天草陶磁器」、愛らしい郷土玩具などを一度に見られて楽しい。

熊本県伝統工芸館の常設展示室。「天草バラモン凧」「五月節句幟」など色鮮やかな展示品も多数。館内には、県内のさまざまな伝統工芸品を販売する人気のショップも
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熊本県伝統工芸館の常設展示室。「天草バラモン凧」「五月節句幟」など色鮮やかな展示品も多数。館内には、県内のさまざまな伝統工芸品を販売する人気のショップも

伝統は食にも息づく。加藤清正が始まりといい、熊本では食せる部位も多いのが馬肉料理だ。最近は、新感覚の馬肉メニューも登場。従来にない料理法や洒落た盛り付けが、目にも舌にもうれしい。

馬肉料理の専門店「菅乃屋」は、洗練された創作料理や会席が魅力
見た目もステキな「馬刺しランチ」は、粉チーズのかかった馬肉のタルタルや馬刺しでお茶漬けを作れるのも新鮮だ
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