八代港/熊本県「受け継がれるレガシーと恵みの海に出会う旅へ」
【特集】美しき港町へ
武士が愛した肥後象がんと
県民グルメの馬肉料理を体感
天草諸島が浮かぶ八代海に面し、九州西岸の中央に位置する八代港。物流や国際貿易の拠点として発展してきた同港に2020年、誕生したのが「くまモンポート八代」だ。世界最大の22万トン級の客船を受け入れ可能で、2023年には「クイーン・エリザベス」が寄港予定。旅客ターミナルに隣接し、84体ものくまモンがお目見えする、「くまモンパーク」があるのは熊本ならではだ。
八代は昔から要地だった。その事実を物語る名所が「八代城跡」。一国一城が原則の江戸時代に、「熊本城」のほか唯一「八代城」は、特例で存続が許された。薩摩藩などの対外勢力に備えた、というのが定説だ。のちに名将・細川忠興や家老松井家が城主となり、明治まで存続した。
日本三名城の1つ、「熊本城」ももちろん必見。熊本地震からの復旧が進み、2021年には、よみがえった天守閣の特別公開がスタート。内部展示も刷新された。城は1607年に加藤清正が築き、やがて細川氏の居城となって明治に至る。6度も屈折する連続枡形など、防御に優れた造りだ。
城下町・熊本のレガシーには、江戸時代から続く「肥後象がん」もある。鉄砲鍛冶が、銃身や刀つばの飾りとして施したのが起源で、武士文化の1つ。鉄に純金や純銀を金づちで打ち込んではめ、その表面に多様な柄を彫るものだ。
「昔、象がんを施した刀つば、鉄砲やキセルは、もう日常にないもの。ですから、より現代の生活の中で使うものを作っています」と話すのは、熊本市内の老舗「光助」の4代目、大住裕司さん。
アクセサリーや名刺入れなどが人気の店内には、華麗な文鎮も。多くの工程をへて、耐久性とともにしっとりと黒をまとった鉄の表面で、気品をたたえ、金の柄が際立つ。武士を魅了したその美しさは、今も人の心を奪う。「光助」では「肥後象がん体験」で、ペンダントヘッドなども作れる。
肥後象がんをはじめ県には多彩な伝統工芸がある。その約90品目を一堂に展示するのが「熊本県伝統工芸館」。外国人にも人気の「小代焼」や「天草陶磁器」、愛らしい郷土玩具などを一度に見られて楽しい。
伝統は食にも息づく。加藤清正が始まりといい、熊本では食せる部位も多いのが馬肉料理だ。最近は、新感覚の馬肉メニューも登場。従来にない料理法や洒落た盛り付けが、目にも舌にもうれしい。