「クイーン・エリザベス」心地良さの秘密と進化した場所
季節のよいオーストラリア周遊クルーズ中の同船に乗船し、
リフレッシュした船内をめぐってきた。
写真・文=藤原暢子
数日、「クイーン・エリザベス」の船上で過ごすと、時間帯によって自然と過ごす場所が決まってくる。提携した「ローラン・ペリエ」のカウンターもあるデッキ9の「リド・プール」。軽食が食べられる「リド・グリル」周辺にはテーブルやイスも増え、にぎやかに。出港の様子を船尾で見るには絶好のスポットだとも、気が付いた。
もう一つの定番になったのが、「ガーデン・ラウンジ」。英国のキュー・ガーデンにあるグラス・ハウスをイメージして造られている。これまで「リド・レストラン」に向かうか、「パビリオン・プール」に向かうかで、素通りすることが多かったが、空調もほどよく、イリーのコーヒーが飲めることが分かって、午後の定位置となった。英国らしく、テレビのモニターではクリケットの試合などが放映されていて、なかなか興味深い。
人恋しいときは、デッキ3の「ミッドシップス・バー」へ。朝食を取らなかった日は、ここのカウンターに座ってぺストリーをつまみながら、同じイリーのカプチーノを作ってもらう。テーブル席なら窓からタグボートなども見えて、近くに座った人とおしゃべりも盛り上がる。入口近くでは四重奏やハープの演奏を行っていることもあるし、ひょいとのぞくと、吹き抜けの「グランド・ロビー」で撮影を楽しむ人や航海日は料理のデモンストレーションを熱心に見ている人たちを眺めることができる。
今まであまり気に留めなかったところがお気に入りの場所になる。そんな施設の多様性もクイーン・エリザベスが秘めた“トリック”かもしれない。
2018年11月に改装されたクイーン・エリザベス。就航が2 0 1 0年な上、メンテナンスが良いので改装は目立たないが、パブリックルームや廊下のじゅうたん、客室のベッドカバーなどがさわやかな色になっていて、新鮮だ。すでに同船に乗られた方は変更した場所を見つける探検ツアーができるかも。初めて乗船するなら、リフレッシュした船内を満喫するチャンスだ。
●名前も新たなスパが誕生
本格的に改装したのは、スパ。「キャニオン・ランチ・スパ」が、キュナード・ラインとコラボレートして、「マレール ウエルネス&ビューティー&フィットネス・センター」と名前を変えた。ジムや美容室はそのままだが、タラソテラピー(海洋療法)の「サーマルスイート」や、施術前後に利用できるリラックスルームが模様替え。ボディーやフェイシャルのトリートメントはミネラルに富む海洋成分やオーガニックなものを取り入れたメニューに刷新した。マッサージの施術中、セラピストが変更になったメニューや使うオイルの説明をしてくれたが、施術技術の高さのあまり、説明の声が遠のき、深い眠りに落ちた。
●スペシャリティー・レストラン
「ザ・ベランダ」が「ステーキハウス・アット・ザ・ベランダ」に
今回の改装で一番大きな変更は「ザ・ベランダ」だろう。初代「クイーン・エリザベス」から名前を継承したスペシャリティー・レストランで、本格的なフランス料理を提供していた。「クイーン・メリー2」「クイーン・ヴィクトリア」にもあったが、改装で3船とも「ステーキハウス・アット・ザ・ベランダ」に変更された。
内装はほぼ変わらず、要予約、有料。極上のニューヨーク・ストリップ・ステーキ、神戸牛、スコットランドの牧草飼育のドライ・エイジングビーフ、英国の塩性湿地で育てたラムなど、さまざまな国の肉と部位がそろう。季節によりロブスターやアラスカ産タラバガニもあるので、シーフードと肉という欲張りな組み合わせも可能だ。
肉の種類と部位、焼き方をオーダーすると、ずらりと並べた肉用ナイフを持ってきて、選ばせてくれるという演出がユニークだ。
前菜やパン、デザートも凝っているので、航海中にぜひ体験したいレストランだ。