まだ見ぬ東京へ。飛鳥Ⅱ船上で楽しむ伊豆の島々

まだ見ぬ東京へ。飛鳥Ⅱ船上で楽しむ伊豆の島々
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2023.08.28
飛鳥Ⅱに乗って、伊豆諸島を周遊するクルーズに出かけた。
船上から見る絶景は「これが東京か」と驚くほど。
さらに島の食材を使った料理の数々に極上の音楽、
露天風呂に伝統工芸作品に……と楽しみは次々とやってきた。
写真・文=石井真弓
飛鳥Ⅱから絶海の孤島、青ヶ島を望む。ここも東京都であることに驚く

横浜の日本大通り駅から大さん橋に向かって行くと、開港広場前の交差点から、港に停まる、赤い二本線のファンネル(※煙突)の大きな船が目に入ってきた。よく晴れた青空に白い船体が映えている。今回の旅は飛鳥Ⅱに乗船して、伊豆諸島の島々を海から楽しむクルーズだ。東京都であるものの、通常なかなか見ることのできない青ヶ島や鳥島、そして伊豆諸島の最南端まで行くというので楽しみだ。

 

無事にチェックインしてキャビンで荷物をほどいた後、さっそく船内を歩き回ってみる。やがて7デッキでにぎやかな楽器演奏とともにセイルアウェイパーティーが始まり、17時に船が出港した。

横浜港大さん橋に停泊中の飛鳥Ⅱ。伝統を受け継ぐ赤いラインが入ったファンネルが目をひく
生バンドの演奏で行われる出航を祝うセイルアウェイパーティー。船旅への高揚感が増す
ベイブリッジを通過する飛鳥Ⅱ。出航早々のハイライト
美しい夕景の中、富士山も望めた。さっそくクルーズらしい絶景シーンだ

■今クルーズのために、総料理長自ら食材探訪に

 

船上で伊豆諸島を楽しむテーマは食事にもしっかり反映され、初日のディナーにさっそく、八丈島の選りすぐりの食材を使ったメニューが登場した。フォーシーズン・ダイニングルームに行く途中、5デッキの吹き抜けのフロアで、アスカビジョンの動画に目がとまった。飛鳥Ⅱの総料理長と洋食の料理長が、なんと漁船に乗って、漁師の方々と一緒に、赤い大きな魚を抱えている。釣った尾長鯛とのこと。今回のクルーズのために、総料理長たち自らが、八丈島にいろいろな食材を調達に行ったのだそう。こんなふうに舞台裏を見せてくれる計らいが心楽しい。

 

アスカビジョンでは食材調達の舞台裏が紹介されていた。食への興味がさらに高まる

 

ディナーは洋食のコースで、まずは八丈島産剣先イカのマリネ。続いて八丈島のジャージー牛のモッツァレラチーズを島レモンと合わせたカプレーゼは、とても新鮮な味わいでうれしい驚きだった。八丈島の島レモンはソフトボール大の大きさで、他に比べて酸味が少なく、ノーワックスなので皮まで食べられるとのこと。その食感とともに美味しく味わった。添えられたグリーンのペーストはバジルと思いきや、八丈島名産の明日葉だった。

 

その後も、先ほど動画で見た尾長鯛のソテーなど、八丈島の食材を生かしたおいしいメニューが続く。メイン料理の黒毛和牛のグリルに添えられた、ジューシーで肉厚の椎茸は、八丈島の生産者による「うみかぜ椎茸」とのことで、これも新しい出会いだった。

 

また、メニューの中に、青ヶ島産の「ひんぎゃの塩」の記載も見つけた。デザートを終える頃、テーブルに寄ってくれた洋食の料理長の大山氏と話すと、八丈島で釣った魚は3D冷凍という技術で新鮮さを保っているとのこと。食材の生かし方やプレゼンテーションもまさにシェフの腕の見せどころで、初日からたっぷり堪能させてもらった。

八丈島のうみかぜ椎茸が添えられたメイン料理の黒毛和牛のグリル
尾長鯛のソテーには、紫芋のパンケーキを添えて。新鮮な組み合わせだ

■絶海の孤島で、飛鳥Ⅱのロゴでもある鳥に出会う

 

翌朝は、軽く朝食を済ませた後、130の島を旅した経験を持つ船旅アンバサダー小林希さんによる講演会「圧巻の自然と独自の文化に出会う東京の島々」を聞いた。大島、神津島、御蔵島、式根島など、伊豆諸島9島の、島ごとの成り立ちや、自然の形、それぞれにユニークな文化圏があることなど聞き応えがあり、もう一つの東京である伊豆諸島について、興味が深まる良い機会になった。

 

船旅アンバサダー小林希さんによる講演会。これから航行する伊豆諸島エリアについてさらに深く知れた

 

晴天の下、船は南へと航行を続け、午後に鳥島の沖合に差しかかった。東京都心から約500キロメートルの絶海の孤島だ。以前は人が住んでいたが、数度の火山噴火で無人島になったという。

 

現在の鳥島は特別天然記念物の鳥アホウドリの保護区域に指定されている。羽を広げると2メートルもの幅を持つアホウドリは、日本最大の鳥だ。昔、羽毛の乱獲で絶滅したと思われていたが、1951年に鳥島の断崖で10羽が発見され保護活動が始まり、現在は約6,000羽を数えるという。

 

しかし、繁殖地が鳥島など非常に限られているため、本州では見ることがない。右舷のデッキから島の沖合を見ていると、飛ぶ鳥が目に入った。大きな羽を広げ、魚を探しているのか、水上すれすれをふわーっとグライダーのように飛んでいる。アホウドリだ。すっかりにわかバードウォッチャーの気分になり、望遠レンズで写真を撮影しながら観察した。まさに「まだ見ぬ東京」を見られた思いだ。ちょうどアホウドリの繁殖シーズンで、若鳥が飛ぶ姿を見ることができたのもラッキーだ。

 

ところで、アホウドリの英語名はアルバトロス。飛鳥Ⅱのロゴマークやクラブ会員ステータスに使われている鳥でもあり、大変に思い出深い体験になった。

 

飛鳥Ⅱのロゴマークにも使われているアルバトロス=アホウドリが飛ぶ姿に見入った
CRUISE GALLERY
飛鳥Ⅱのロゴマークにも使われているアルバトロス=アホウドリが飛ぶ姿に見入った

■サービス精神に拍手し、ラテンサウンドに心躍る

 

船はさらに南下を続け、午後遅く、巨大な鯨がヒレを海から垂直に突き出すような形の岩が見えてきた。とうとう、伊豆諸島の最南端にある孀婦(そうふ)岩まで来たのだ。東京から約650キロメートル。船は、岩を観察しやすい速度でゆっくりと進む。岩と行ってもかなり巨大で、水面からの高さは約99メートルもあるという。数年前にロッククライミングした強者もいるそうだ。

 

デッキにいたクルーと話すと、通常は小笠原諸島へのクルーズで夜間に通るため、明るい時間帯に孀婦岩を見るのはレア中のレアとのこと。それを見せるこのクルーズのアイデアとサービス精神に、心の中で拍手した。岩の近くで、クジラが吹いた白い潮が二度ほど見えた。姿は見えなかったが、小笠原諸島にも近いこのあたりに生息するザトウクジラだったのかもしれない。ここから船は方向を変えて、北上していく。

美しい夕暮れの中、孀婦(そうふ)岩を望む。このクルーズならではの粋な計らいだ
海の中からすっくと立ちあがるような孀婦(そうふ)岩の雄姿

 

夜はギャラクシーラウンジで、人気のサルサバンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスの・ショーを鑑賞した。以前、中南米を旅したときに現地の人から「日本のオルケスタ・デ・ラルスを知っているか?素晴らしいよ」と言われたことを思い出しながら、すぐ間近でライブを見られることに感動した。ボーカルJINさんの歌声と熱いホーンセッション、コンガなどの演奏で、本場のサルサ曲の他、ラテンサウンドでの「島唄」、「私はピアノ」などを聴くことができ、ぜいたくな夜をたっぷり堪能した。

海外でも人気の高い、オルケスタ・デ・ラ・ルス。華やかなステージに魅せられる
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海外でも人気の高い、オルケスタ・デ・ラ・ルス。華やかなステージに魅せられる
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