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にっぽん丸洋上のミュージカル劇場へ
■きらびやかなステージを体感できるクルーズの幕開け
あいにくの雨の中、横浜港大さん橋で迎えてくれたにっぽん丸。今回のクルーズは「ミュージカル」をテーマに、初日の夜はデュオコンサート、2日目の夜はオリジナルミュージカルの上演が予定されている。どんなステージになるのか、期待に胸を膨らませながら乗船した。
出港の10分ほど前になりデッキに出てみると、乗船前に降っていた雨はすっかり上がっていた。デッキには出航シーンを見届けようと集まった乗客たちでにぎわっているところに、出航を告げるドラの音がジャーン、ジャーンと響く。するとそれまでのどんよりとした曇り空から、太陽が顔を出したのだ。一瞬の出来事だったが、まるでミュージカルクルーズの船出を祝ってくれているようだった。
■歌とピアノで奏でるミュージカルの世界を堪能
ディナーを満喫した後、第1夜のエンターテインメントショー「島田歌穂&島健 Duo Concert」へ向かった。
冒頭にゼネラルマネージャーからの挨拶があり、いよいよデュオコンサート。盛大な拍手の中、ステージに島田歌穂さんと島健さんが登場し、ミュージカルソングの王道『オーバー・ザ・レインボー』でスタートした。のびやかで、艶やかで、語りかけるような歌声と、そっと寄り添うようなピアノの音色に一気にミュージカルの世界に引き込まれていった。
続いてはこれまで島田さんが出演された数多くのミュージカルから特に印象深い3作品で歌われた曲が披露された。初主演を務めたミュージカル『アニーよ銃をとれ』から『ショウほど素敵な商売はない』では、チャーミングな歌声と軽快なリズムが心地よく、会場全体が手拍子で盛り上がった。
『ウエスト・サイド・ストーリー』の『I Feel Pretty』、『サウンド・オブ・ミュージック』のタイトル曲『サウンド・オブ・ミュージック』と続く。『ウエスト・サイド・ストーリー』は2004年の日本上演の時に島田さんはマリア役で出演、島さんは音楽監督を務められ、おふたりにとって思い出深い作品とのことで、作品のストーリーと合わせて島田さんならではのエピソードが聞けたのが印象深かった。
『メリー・ポピンズ』メドレーでは、『チム・チム・チェリー』、『2ペンスを鳩に』に続いて『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス』が始まると会場からは手拍子が起こり、島田さんはステージから降りて左へ右へと歩きながら歌う。さらに「今日は大好きなにっぽん丸…」とにっぽん丸用に替え歌も。会場は大いに盛り上がった。
さらにディズニーミュージカル『美女と野獣』の名曲『ビューティー・アンド・ザ・ビースト』、雰囲気ががらりと変わりミュージカル曲でありながら、愛され続けるジャズのスタンダートナンバーも聞くことができた。
そして島田さんの人生を変えてくれた1曲として披露されたのが『レ・ミゼラブル』から『On My Own』、最後の曲は『キャッツ』より『Memory』。爽やかな歌声が会場に響きわたった。
歌い終わってからもしばらく拍手は鳴りやまず、アンコールではディズニー映画『ピノキオ』の主題歌『星に願いを』が歌われ、温かな気持ちに満たされてステージは幕を閉じた。
ある曲では語り掛けるように、ある曲では観客である私たちを鼓舞するように、曲ごとに表情も声色も変化して、聞いて、見て大満足のステージだった。
■日中はクルーズライフを満喫し、夜はミュージカルの世界へ
2日目はすっきりと気持ちのよい快晴となった。日中は駿河湾を航行していたので、デッキに出て富士山を眺めたり、「船クイズ」や「絵心リレー」など船内イベントに参加したり、ラウンジでハウスバンド、アスール★プラ★プティの演奏に耳を傾けたり、ゆったりとクルーズライフを満喫した。2日目の夕方以降のドレスコードはセミフォーマル。メインエントランスはドレスアップした乗客でにぎわい、その雰囲気はまるで劇場のエントランスホールのような華やかさだった。
■にっぽん丸のドルフィンホールが1920年代にタイムスリップ
ディナーの後、第2夜のエンターテイメントショーは待ちに待ったミュージカル『THE THEATER』の幕が上がる。
この作品は、オリジナルミュージカルやショーの演出、脚本家、俳優として活躍する玉野和紀さんのオリジナル作品をにっぽん丸用にアレンジしている。その内容は1920年代、華やかなショーが盛んだったニューヨークのとある劇場を舞台に、そこで生き抜いたエンターテイナーたちの切なくも美しい姿が描かれているとのこと。どんな物語なのか、どんなステージが展開されるのか、ワクワクした気持ちで待ち構えていた。
真っ暗なステージに、スポットライトに照らされて登場したのは劇場の支配人を続けている1970年代を生きるフランク(藤重政孝)。彼が歌う、どこか懐かしさをまとった『スマイル』で、会場全体が徐々に物語の世界へといざなわれていく。フランクと劇場の元スター・ジョージ(玉野和紀)が1920年代の華やかな頃の思い出を語るところから物語は始まった。