アラスカ！ 最果ての地を優雅にめぐる
クイーン・エリザベス乗船レポート

「クイーン・エリザベスで行くアラスカクルーズ」── そのフレーズを聞いたとき、頭の中に「？」が浮かんだ。どんなクルーズになるのか想像がつかなかったのだ。

クイーン・エリザベスといえば、英国女王の名を継ぐ客船で、アフタヌーンティーや社交ダンスといった「伝統的な」クルーズを行うイメージがある。ドレスコードもきっちりしており、さらに生バンドの演奏をバックに踊れるダンスタイムも名高い。

一方でアラスカといえば、氷河や野生動物がまず思い浮かぶ。米国内では各州にキャッチフレーズがついているが、アラスカ州は「最後の辺境」。クルーズ船でめぐるのが定番ではあるが、ワイルドでアクティブな船旅のイメージだ。

そのギャップやいかに……と、実は荷造りの時から頭を悩ませた。7泊のクルーズでフォーマルな装いが求められるガラ・イブニングは2回。一回は「アイス・ホワイト・ボール」というイベントが予定されており、氷河をイメージした白、青、銀色がドレスコードだ。そして2回目はキュナード・ラインの定番ともいえる「マスカレード・ボール」＝仮面舞踏会。これら2晩分のドレスやパンプスをスーツケースに入れたうえで、アウトドア用のレインジャケットやハット、日焼け止めも詰め込んだ。これほどまでにバラエティーに富んだ荷物が必要な旅も珍しい。

しかし多種多様なアイテムを詰め込んだ荷物は、なんと日本出発時に重量オーバー！　空港で、慌ててスーツケースから手荷物に入れ替え作業を行う羽目になった。

実はクイーン・エリザベスには無料のランドリーがあり、洗濯機や乾燥機、アイロン、無料の洗濯洗剤までそろう。今回はクルーズ全日分の洋服や下着を持っていったが、例えばTシャツやルームウエアなどは、片手間に洗えばよかったと後から気づいた。

いざクイーン・エリザベスに乗ってしまえば、出発時のドタバタはどこへやら、実に快適な船旅が待っていた。出航翌日にさっそくクイーンズ・ルームで催されたのが、「アイス・ホワイト・ボール」。ボールとはラテン語の「舞踏」に由来、いわば「氷と白をテーマにした舞踏会」とでも言おうか。

ブルーの照明の下、白・青・銀色のドレスコードに即した「氷河ルック」の男女が踊る姿は、まさしく舞踏会そのものだった。映画の世界が目の前に現れたかのような光景に、うっとりとする。

ドレスコードに関して、荷物が増えるのもあって「面倒くさい」と思う人がいるのも理解できる。けれどせっかくのクルーズなのだ。ドレスやスーツ、タキシードを用意して、映画の登場人物になった気分で、目いっぱい「着る楽しみ」を満喫するほうが、きっと後々思い出に残るだろう。

中にはドレスコードが「不安だ」という人もいるだろう。「周囲から浮くのではないか」と。もしそれが心配なら、クイーン・エリザベスの場合、目いっぱいゴージャスにしていこう。この船のフォーマルナイトで「地味すぎる」ことはあっても「華やかすぎて浮く」ことはない。

スパンコールをキラキラさせたドレス姿のマダムが優雅に踊っているのを見て、やっぱり私ももう一段華やかなドレスにすれば良かった……と密かに思いつつ。