「MSCベリッシマ」に続き「シルバー・ムーン」も!
ジャパネットが目指すクルーズの未来は

「MSCベリッシマ」に続き「シルバー・ムーン」も! ジャパネットが目指すクルーズの未来は
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2024.01.05
独自のクルーズ商品とテレビショッピングを使った販売で新風を吹かせているジャパネットツーリズム。
MSCベリッシマで実施したクルーズの数々は、日本外航客船協会主催の「クルーズ・オブ・ザ・イヤー2023」にも輝いた。
今までの変遷と今後の展望について、茨木智設代表取締役社長に話を聞いた。
聞き手=吉田絵里 構成=上妻優里
ジャパネットクルーズのホームページでは、クルーズに関する動画も多数公開している。初心者にもわかりやすい説明が好評だ

テレビショッピングでおなじみのジャパネットがクルーズ業界に参入したのが2017年。コロナ禍を経て、2023年には「MSCベリッシマ」のチャータークルーズを再開した。オリジナル商品の開発に注力、メディアを使った独自の販売方法で新規ファンを獲得している。

 

2023年3月には、クルーズを中心とした旅行事業の拡大を見据え、グループ企業のジャパネットサービスイノベーションから旅行事業を独立させ、ジャパネットツーリズムを立ち上げた。

 

業界に新しい風を吹き込む茨木智設代表取締役社長はいま、どんな未来を見ているのか。

茨木智設代表取締役社長

 

──2023年の状況はいかがでしたか。
茨木智設代表取締役社長(以下敬称略) 2023年は「MSCベリッシマ」で計13回のチャータークルーズを行いました。コロナ明けから運航再開したこともあり、予約やキャンセル率が読めず一部苦戦することもありました。ですが、失敗と成功を分析してさまざまなデータを蓄積でき、その意味では良い一年になったと思います。

 

──販売を復活する際、クルーズに対する懸念はなかったのでしょうか。
茨木 2020年は「ダイヤモンド・プリンセス」での感染拡大があり、弊社ではかなり早い段階でその年のチャータークルーズの中止を発表しました。視聴者の方の心情や、寄港地への影響などを慎重に考えたからです。

 

一方、販売再開を決めた時は「再開します」とメディアで大々的に発信しました。「クルーズに参加しても大丈夫」ということを、視聴者に広く伝えることが我々の使命だと思っていました。

「MSCベリッシマ」で計13回のチャータークルーズを行った

 

──お客さんの反応について、コロナ前との変化は感じますか。
茨木 クルーズは大体90日前からキャンセル料金がかかりますが、そこに対する懸念はコロナ前よりも高まったように感じます。弊社の顧客はシニアの方が多いので、1年後に健康でいられるかという不安がある中で、さらにコロナなど体調に関する懸念事項が増えました。そこでわれわれの取り組みとしては、キャンセルポリシーをなるべくゆるくして、不安を少しでも取り除いていく努力をしています。

 

──当初からMSCクルーズの船をチャーターしていますが、船社の選定理由を教えてください。
茨木 会社の理念が非常に近いのが一つの理由です。お互いオーナー企業であり、こちらの要望に対しての対応のスピードがとても早く、やりやすさを感じます。

 

MSCクルーズはイタリアをはじめヨーロッパの文化を取り入れたスタイルが魅力ですが、われわれの要望も積極的に取り入れ、日本人乗客を楽しませる改善にも余念がありません。

 

ジャパネットは、あるものをそのまま販売するのではなく、「一緒に改善してより良いものを創りあげていく」という理念があります。それがMSCクルーズとうまくかみ合ったからこそ、満足できる商品をともに生み出すことができていると感じています。

パーティーなども行われるMSCベリッシマのガレリア

 

──ジャパネットならではのクルーズ商品の特徴を教えてください。また、どのようなことを改善しているのでしょうか。

 

茨木 これまではクルーズ料金にドリンクを含んだオールインクルーシブ制にしたり、また無料循環バスを提供するなど商品のスペック部分を強化していました。2023年はサービスの本質的なところに踏み込んで改善を図りました。

 

船内でいえば、日本人が満足できる日本食を提供できるよう改善しました。例えば味噌汁は、お客さまに提供する際に底までしっかりかき混ぜてから注ぐように外国人クルーに周知しました。味噌汁は大きな鍋で置いておくと分離してしまうので、それを均一な味にするためです。明太子、梅干しなど朝食の鉄板メニューも備えています。

 

評判がよかったMSCベリッシマの和朝食

 

──寄港地の選定方法は。
茨木 基本的に弊社で寄港地を選定しています。われわれは日本一周にこだわっているので、効率よくめぐれるルートに加え、観光地など総合的に鑑みて、ベストな寄港地が決まりつつあります。2024年は自信を持ってお届けする「鉄板コース」を中心に、リピーター向けのコースも用意しています。

 

──その背景には、さらに新規市場を開拓したいという思いがあるのでしょうか。
茨木 そうですね。クルーズがこんなにお得で、すばらしい旅行商品だと知らない人がまだ多いので、そういった方々にベストなクルーズ商品をお届けするのが、今は最適解だと思います。

 

2023年もほとんどが初乗船の方でした。クルーズを知らない人たちが初体験して、「船旅っていいね」と思ってもらうことがわれわれの役目だと思っています。

 

寄港地ツアー専用のパンフレットも制作している

 

──2023年のクルーズに関して、お客さんの反応はいかがでしたか。
茨木 アンケートの結果、現時点では満足度がかなり上昇しています。ひとつの課題としては、寄港時間です。少し短いところもあり、寄港地でもっとゆっくりしたいと感じた人が多かったようです。

 

久しぶりの旅行ということもあり、寄港地で体力がもたない方も。一方で観光を目一杯楽しみたいという気持ちはよくわかるので、2024年のチャータークルーズは寄港時間を多めにとって、そのぶん終日航海日を1日増やす方向で考えています。

 

終日航海日を入れるとそのぶん寄港地が減るので、勇気がいる決断です。でもそこはクルーズをトータルで満喫していただくために、疲れが出てくるころに終日航海日がくるように組んでいます。船内のサービスもより楽しんでいただけると思います。

日本を航行する客船としては最大のMSCベリッシマ。船内に写真映えするスポットも多い
航海日があるクルーズでは、のんびりプールサイドで過ごしたりと船旅らしい時間が持てる

 

──2024年3月、シルバーシー・クルーズの「シルバー・ムーン」をチャーターするのにも驚きました。

茨木 MSCベリッシマの上級客室「ヨットクラブ」の売れ行きがとても好調です。メディアでほとんど紹介していませんが、すぐ予約が埋まって、需要に応えられない状況が続いていました。

 

そうした状況でワンランク上のサービスを求める方が一定数いらっしゃるのがわかったので、いずれはラグジュアリー船もチャーターしたいという想いがありました。そこでご縁があり、シルバー・ムーンのチャータークルーズを実施する流れとなりました。

 

資料請求のWEBサイトも高級感のあるものになっている

 

──販売方法について、今までとの違いはあるのでしょうか。
茨木 メディアを使って大々的に宣伝するというよりは、資料請求があった方やリピーター向けにご案内する形を考えています。金額も高額なので、まずはしっかりパンフレットで説明し、内容を理解した上で予約していただきたいと思っています。

 

──シルバー・ムーンのクルーズでもジャパネットならではのポイントはありますでしょうか。
茨木 ひとつはジャパネットが契約したレストランのシェフを乗船させ、オリジナルの和食レストランを運営する計画をしています。

 

シルバー・ムーンの食事は私が人生で食べてきた中でもトップ3に入るおいしさです。そこで日本食も日本人のお客さま向けの味を体験できたら、さらに完成したものになるのではと思っています。

 

もう一つはオプショナルツアーです。日本人の方向けのラグジュアリーで特別な体験ができるツアーを設定していきます。

パンフレットも重厚感があり、ビジュアルからラグジュアリーなクルーズの魅力が伝わってくる

 

──2023年3月、分社化しました。かなりの覚悟だったのでは。
茨木 もうまさに「覚悟」というのが、全ての答えです。ジャパネットには「ひとつの事業としてある程度成熟してきたら分社化する」というポリシーがあります。今はクルーズ中心ですが、将来的にはさらに事業を拡大予定で、それを見越して分社化しています。

 

──今後の旅行事業の展開は。
茨木 チャータークルーズは引き続きやりたいですし、今後はフライ&クルーズやクルーズではない国内旅行の販売も考えています。

 

今後もクルーズを軸に、ある程度完成されたストーリーを選定しておすすめするというスタイルは変えず、よりお客さまに満足していただける商品づくりに励みます。

 

取材協力:ジャパネットクルーズ

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