【特集】キュナード・ライン新造船
英国の伝統を受け継ぐクイーン・アンデビュー

【特集】キュナード・ライン新造船 英国の伝統を受け継ぐクイーン・アンデビュー
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2024.06.27
「キュナード・ラインが進化した」──
2024年5月に初就航したキュナード4隻目の新造客船「クイーン・アン」の船内を歩き、そう感じた。
キュナードの184年の伝統を受け継ぎつつ、革新をもたらすこの新たな客船を本邦初公開しよう。
写真・文=吉田絵里
伝統的なボールルームとグランド・ロビー
インテリアが刷新され、新時代へ

キュナード・ラインが思い切った!……そんな思いがジワジワとこみ上げてきた。幸運にもキュナード・ラインの4隻目となる新造客船「クイーン・アン」の初めての営業航海に乗船、静かに興奮しながら船内を散策しならがら感じたことだ。

 

キュナード・ラインといえば、英国の伝統を受け継ぐクルーズ・ラインとして知られる。もともとは英国と米国をつなぐ太平洋横断航路で成功を収め、歴史に名を残した船会社である。

 

日本発着にも就航、日本人には一番知名度の高い客船「クイーン・エリザベス」の次なる客船ということで、クイーン・アンに注目する方も多いだろう。船内には生粋のキュナード・ファンという日本人乗客の姿もちらほら見られる。それでも大多数を占めるのが英国人乗客で、長年にわたってキュナード客船に乗り継いできたという風情の方々ばかり。皆、少し高揚した様子で船内を歩いていた。

 

刷新された2大施設

 

そんな船内で大きなインパクトを受けたのが、キュナードを代表する施設ともいえるグランド・ロビーとボールルームだ。クイーン・エリザベスでは、エリザベス女王の甥にあたる第2代スノードン伯爵の寄木細工の壁画がクラシカルな雰囲気を醸し出していたが、クイーン・アンのそれはゴールドに輝くガラス製のもので、かなりモダンな印象。見る角度によって異なる「クイーン船」の絵が浮かび上がるという遊び心も秘められている。

 

同様に2層吹き抜けのボールルームは、ステージの背後にLEDスクリーンが配置され、かなり進化した印象だ。乗船したクルーズではイベントによってスクリーンに映し出される映像が変わり、印象もガラリと変わる。キュナードの歴史を歌を語りで披露するイベントの時にはモノクロームの写真が次々と映し出された。一方で夜のエンターテインメント時には、カラフルな映像とライトで、ディスコ風に。いやその現代的な雰囲気はディスコより「クラブ」と言い換えたほうがいいかもしれない。

他船同様、螺旋階段に囲まれたグランド・ロビー。
他船同様、螺旋階段に囲まれたグランド・ロビー。ただし中央の真ちゅうの壁画は見る角度によって停泊中/航行中など絵柄が変化する斬新なもの
デッキ2〜3と吹き抜けになったブリタニア・レストラン。
デッキ2〜3と吹き抜けになったブリタニア・レストラン。「クイーン・エリザベス」の木目調のインテリアから一転、ゴールドとガラスをあしらったスタイリッシュなものに変化した

変わるもの、変わらないもの

 

「1919年、初代『モーレタニア』がここ英国サウサンプトンからニューヨークに向けて出航しました。そのときから街の景色は変わったかもしれませんが、キュナード・ラインの心は変わっていません。ただし船はより快適に、食事や健康的に過ごせるウェルネス施設など、選択肢の多いものに生まれ変わりました。クイーン・アンの初めての航海をお楽しみください」。

 

キュナード史上初の女性船長であるインガー・クレイン・トーハウガ船長がそう船内放送で語りかけると、クイーン・アンはゆっくりと初めての航海に出航した。

 

初めての営業航海の出発地となったサウサンプトン港では、クイーン・アンの初出航を祝って、盛大に花火が打ち上げられた。

黒の船体に赤いファンネルという、キュナードの伝統を受け継いだ外観。
黒の船体に赤いファンネルという、キュナードの伝統を受け継いだ外観。背が高く、スラっとした印象を受ける
初就航を祝って、船内のボールルームでは音楽隊の演奏も行われた。
初就航を祝って、船内のボールルームでは音楽隊の演奏も行われた。こうしたところにも英国の伝統がいきる
初出航を祝って、港では盛大に花火が打ち上げられた。
初出航を祝って、港では盛大に花火が打ち上げられた。プールデッキからは乗客たちがその感動的なシーンをスマホに収めていた
リゾート感がアップしたプールエリア
北欧調の壁紙を採用、客室も現代的に

グランド・ロビーとボールルームは下層階1〜3デッキの中心的スペースだが、上部9デッキのプールエリアもかなり印象が刷新された。これまでのクイーン船と言えば、プールエリアも木材を多用したクラシカルな印象だった。一方、クイーン・アンの一番大きいプールエリアである「ザ・パビリオン」は、青と白の市松模様のタイルがパッと目を引く空間に。開閉式の屋根がつけられたリゾート気分満載の空間で、スペースも前3隻に比べてかなり広々としている。実際、クルーズ中は好天に恵まれたのもあって、常に体いっぱい太陽を浴びようと集った乗客たちでにぎわっていた。ここにはハンバーガーやホットドッグがテイクアウトできるグリル(無料)があり、さらにキュナード・ライン初登場のジェラートスタンドも(有料)。

 

さらにここは新たな社交場としても活用されていた。スクリーンのある前方ではライブ演奏も行われ、時にパーティー会場に。リピーターズ・パーティーもここで行われ、皆でカクテル片手に乾杯するシーンは実に絵になっていた。

 

船尾にあるプール・エリア「パノラマ・プール・クラブ」も同様に、リゾート感いっぱいだ。航跡が見渡せる開放的な空間で、時間によってはライブミュージックやトリビアなどのイベントも行われる。乗船したクルーズは英国サウサンプトンを出航し、スペイン、ポルトガルと南下していくクルーズだっただけに、気温が上がるにつれて集う人の数が増えていったのが印象的だった。ディナー前後にここでカクテル片手に集う人たちの姿も少なくない。また出航時にも多くの人が離れゆく街並みを眺めながら語り合っていた。

 

公室だけでなく客室も変化したと感じた。キュナードは伝統的に客室によって利用できるダイニングが異なる等級制を採用している。今回宿泊したプリンセス スイートは、プリンセス・グリルを使える上級客室だった。

 

まず目を引くのが、赤を基調にしたインテリア。壁は北欧調のモチーフが描かれた壁紙が採用され、さらに間接照明もアクセントになって他船のクラシカルな印象からモダンになったと感じた。

 

一方でキュナードらしいなと思ったのが、デスクだ。丸鏡がついたデスクは、上部に物を置けるもので、書き物などをするにもピッタリ。長い航海ではここで家族や友人に手紙を書く人もいるだろう。

 

客室にはエスプレッソ・マシーンも置かれ、イタリア製のイリーのコーヒーも楽しめる。またルームサービスは24時間頼め、さらにディナーはプリンセス・グリルと同じフルコースもオーダー可能だ。

 

上級客室だけにクルーズ代金はアップするが、「一度グリルクラスに泊まると、次もグリルクラス」という人が多いのは、きっと他のキュナード船同様だろう。

市松模様の床が印象的なプールエリア。
市松模様の床が印象的なプールエリア。他船よりもスペース自体が広くとられている。スクリーンの前にスペースが確保されており、ここでライブ演奏も行われた
プールデッキで無料で楽しめるハンバーガー。
プールデッキで無料で楽しめるハンバーガー。オーダーするとその場でグリルしてくれる
船尾にあるパノラマ・プール・クラブ。
船尾にあるパノラマ・プール・クラブ。サウサンプトン出航時はまだ肌寒かったが、南下するうちにプールに入る人も増え、ライブ演奏なども行われにぎわいが増した
丸い間接照明がアクセントになったプリンセス スイート客室。
丸い間接照明がアクセントになったプリンセス スイート客室。絨毯の絵柄も北欧風で、現代的な印象を受ける。ソファも広く、座り心地がよかった
丸鏡のついたデスク。
丸鏡のついたデスク。イスもしっかりしていて、座り心地がいい
デスクの反対側はドリンク等が置かれるスペース。
デスクの反対側はドリンク等が置かれるスペース。北欧風の壁紙が明るい印象
広いリビングルームがついた客室もある。
広いリビングルームがついた客室もある。こちらは6デッキのソレント スイート。どの客室も海や航海をモチーフにしたアイテムが飾られている
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