6年ぶりの飛鳥Ⅱ世界一周クルーズ
ゆったり船上生活と憧れの寄港地へ
感慨深いという言葉が最もふさわしい、誰もが待ち望んだ飛鳥Ⅱの世界一周クルーズ。同船では2 018年以降に世界一周はなく、2019年のハワイ・アラスカグランドクルーズ以来、本当に久しぶりの海外長期クルーズになった。
世界情勢の変化で航路は当初のスエズ運河通航ではなく喜望峰まわりに変更されたものの、ここ数年で施設やサービスをさまざまに改善・グレードアップしてきたこの船をいっそう楽しめるコースになったと言っていい。筆者は今まさに、船上でそれを満喫中だ。
この原稿は4月5日に横浜を出航してからのひと月少々、フランス・オンフルールまでの区間についてを綴ろうと思う。紺碧の海原が広がる窓外を眺めながら、船上でこれを書いている。
●世界一周ならではの眺めを、より洗練されたもてなしで
新たな航路は、日本を離れたあとに南下してシンガポール、マラッカ海峡を抜けてインド洋を西へと向かう。ポートルイス、ケープタウンと寄港して、そこから先は一気にテネリフェ島へ。
前半は要所に寄りつつ終日航海日が多めなのが特長だ。結果的には、これがとてもよかった。例えば2020年に新設された露天風呂は、世界一周クルーズで楽しめるのは初めてだ。日本文化の最たるものとも言うべき露天風呂を世界の大洋を目前にして楽しむ、これ以上ない贅沢。
ラウンジなどでは「きょうは露天風呂に何回も入ったよ」と談笑する声をよく耳にした。筆者自身も特に喜望峰を回り込んだ先、かのナポレオンが幽閉されたセントヘレナ島の沖合などでは、ここぞとばかりに露天風呂を堪能した。大西洋の絶海の孤島と夕焼けの海を望む露天風呂。実は旅館記者歴も30年になる筆者だが、その経験をもってしても、こんな絶景露天は他にないと断言できる。
そして毎日の料理、特にディナーは以前にも増して繊細で調和が取れた、よりおいしいものになったと感じる。和食も洋食も。今航は初の世界一周だという乗客も多いが、過去のクルーズを知るリピーターの数人に尋ねると、
「そうですよね! いっそうおいしくなりましたよね」
と、わが意を得たりという笑顔で答えてくれた。リドガーデンのビュッフェがさらに充実し、食の選択肢自体も増えている。地球を半周回った先でも常に変わらず料理がおいしいことは、船上生活が長いだけに、最も大切で心安らぐ要素といえるかもしれない。