にっぽん丸でかなう、寄港地との新たな出会い
乗船しているだけで、優雅さと特別感に包まれる「にっぽん丸」。クルーズによっては、さらにプレミアム感を味わえる、寄港地での特別なイベントも用意される。乗客全員が参加できる点もうれしい。この特別なイベントは、これまで屋久島の森や熊野三山の一つとして名高い「熊野速玉大社」、「大塚国際美術館」などでのコンサート、和歌山城での天守をバックにした能公演など、荘厳な空気の中、貸し切りでにっぽん丸の乗客のためだけに、実に贅沢な内容で展開されてきた。陶板で原寸大に再現した、西洋名画を堪能できて人気の大塚国際美術館では貸切で美術作品鑑賞も。数々の名画に、混雑とは無縁で見入る優越感や愉悦と言ったらたまらない。
2024年6月にはクルーズ船として初めて、「沖縄美ら海水族館」の「黒潮の海」水槽前での貸切ディナーも実施予定。まるで「美ら海」の中にいる気分でディナーを味わえる。
実施に向けては、まず港からの所要時間と収容人数、使用許可を得られるかを必ずチェックする。すべてOKなら企画始動だ。たとえば熊野速玉大社は世界遺産の構成資産であり、使用許可を取るのは容易ではない。「ここで上演できたら素敵だろうなと思い、自治体の方とダメ元でお願いしに行きました」と語るのは営業企画担当の冨田瑞穂さん。宮司さんはこのイベントを通じ、にっぽん丸のファンになってくださったそう。
開催するには、お世話になる現地との信頼関係も必須だ。そのためにも下見、打ち合わせは基本的に足を運んで行う。「船を『入港させてもらう』という意識で、現地とは丁重にやりとりします」(冨田さん)。入港に備え、岸壁付近を自発的に手入れしてくれる寄港地もあり、船は入港できて当然、ではないという。「会場の設営・撤収も現地の業者さんに任せきりではなく、私たちも加わります。仲間という感覚です」と寄港地ツアー担当の藤川悟さん。
こんな姿勢がおのずと通じ信頼関係が築かれていく。屋久島の森のコンサートでは、終盤に照明が消され、ホタルが宙に放たれて感動を呼んだことも。実は予定外のことだった。「地元の方々がせっかくだからとコンサート中にホタルを集めてくださって、放つことに」(冨田さん)。「地元の方の『よりよいコンサートに』との思いと、私たちの『お客さまを大満足させたい』という思いが一つになって生まれたサプライズですね」(藤川さん)。こんなうれしい驚きに恵まれたら、感無量だ。
ちなみに屋久島では本土からバスをチャーターしたり、虫よけスプレーが足りなくなり、急きょ現地で買いに走るといった大変さも。イベントや寄港地ツアーでは、運営スタッフの尽力も欠かせない。