ピースボート世界一周クルーズレポート
バージョン・アップしたパシフィック・ワールドで
欧州の歴史と北欧の絶景に息をのむ
快適さが欧州クルーズへの期待を高める
ユーラシア大陸を横断するように東京からリスボンへ、飛んだ。到着の翌朝、アルファマの丘から見下ろすテージョ川には、地球一周クルーズ中の「パシフィック・ワールド」が停泊していた。
リスボンで姿を現したのは、パシフィック・ワールドだけではない。フランス在住のフォトグラファー、吉田タイスケさん。昨年のピースボート地球一周のヨーロッパ区間取材でもご一緒した。ちょうど1年ぶりの再会となった。
5月28日午後8時30分。パシフィック・ワールドは夕陽に照らされながら、リスボンを出港。ジェロニモス修道院、発見のモニュメント、ベレンの塔を右手に見ながら大西洋に乗り出してゆく。
4月13日に横浜を出航したピースボートの地球一周クルーズだが、アデン湾の政情不安からスエズ運河通航およびギリシャなど地中海の寄港断念を余儀なくされ、アフリカ大陸南端・喜望峰回りへと大変更を強いられていた。
昨年も乗船していたTさんとバッタリ遭遇した。彼女はピースボート乗船歴20回を優に超すヘビーリピーターだ。そんなTさんも、「喜望峰からアイスランドまで大西洋を縦断するという航路がとてもユニークで、毎日ウキウキです!」と興奮していた。そして「去年よりも食事が進化しました」とも言う。なるほど、ダイニングルームの料理は、前年をはるかに上回る美味であった。
また、今クルーズから衛星インターネットアクセスサービス「スターリンク」が導入され、洋上のネット環境も大幅に改善。メールのチェックはもちろん、SNSの発信、さらに船内での待ち合わせもLINEなどを利用して行った。
船内イベントも充実。リスボンで活躍するファドシンガーであるマヤ・ミリンコヴィッチさんの公演は、アルファマのファドハウスにいる気分にさせてくれる。そしてイギリス海峡にさしかかったところで、専属バンドの演奏によるビートルズナイト。ロンドンへの期待を高めてくれた。
■フランスの愛らしい街へ
5月31日。ル・アーブル(フランス)に寄港。ノルマンディー地方にお住まいのタイスケさんのご自宅はル・アーブルから1時間半ほどのところにある。「忘れ物取りに戻れますよね?」と冗談を言ってみたが、この日はセーヌ川を隔てた港町オンフルールへ向かう。
来たる6月6日は第二次世界大戦中のノルマンディー上陸作戦80周年。お土産店ではそれを記念したグッズ(マグネットなど)が数多く売られており、硝煙臭さがいささか気になる。
が、旧港を取り囲む古い街並みはかわいらしい雰囲気。フランス語が話せるタイスケさんのおかげで、より楽しく街めぐりができ、おいしいものにありつけた。そのタイスケさんも言った。
「オンフルールに来て、あらためてフランスっていいなと思いましたよ」。
■世界遺産を望むリバークルーズ
6月1日。テムズ川をさかのぼって、ティルベリー(英国)入港。ピースボートが手配した高速ボートに乗り換えてロンドンへ向かう。グリニッジを通り過ぎ、タワーブリッジをくぐり、ロンドン塔などを眺めているうちにビッグベンの時計塔が近づく。世界遺産をいくつも眺められるリバークルーズで壮大なロンドン絵巻を楽しめた。
2003年、筆者は当時ピースボートがチャーターした「ザ・トパーズ」の初クルーズに乗船した。その時、洋上で講師をつとめた日本人ゲストが連れていた幼い男の子がいた。それが在ロンドンのSくん。いまや英語はおろかスペイン語も堪能な青年に成長していた。ビッグベンの前でSくんと待ち合わせ、ロンドンをめぐる。
初日はビートルズのジョン・レノンとオノ・ヨーコが暮らしていた家、ビートルズの4人が横断歩道を渡ったアルバムジャケットで世界一有名になったアビーロードなど聖地巡礼。翌日Sくんは撮影のタイスケさんのアドバイザーとして付きっきり。その間、筆者は別行動。20世紀初めに英国留学をしていた夏目漱石の下宿跡を訪ね、ナショナルギャラリーで絵画鑑賞などロンドンの日曜を満喫した。