今こそギリシャへ!
ギリシャの船社セレスティアルで満喫する
憧れのエーゲ海クルーズ
乗船日の前日、アテネに入りパルテノン神殿を訪れた。いつもより早く厳しい暑さが訪れていたが、神殿ある丘の頂上は古代ギリシャ建築と美術の最高傑作を見んとする観光客で埋め尽くされている。「ギリシャの栄華と権威を象徴する遺跡なんだよ」と、隣のギリシャ人は誇らしげに言う。
ギリシャはかつて地中海貿易の中心地として、東西南北の異文化から影響を受けてきた。だからだろうか、サフラン色の太陽で褐色に染まった白壁の様子も相まって、タクシーから見えるアテネの街並みはどこか混沌としたエキゾチックな魅力にあふれている。そこに突如として浮かび上がったのは目にも鮮やかな白とコバルトブルー。ピレウス港に停泊するセレスティアル・ジャーニーだ。これから巡るエーゲ海を思わせる圧倒的なウォーターイメージに高揚感が湧いてくる。
早速乗船し船内を散策した。そこにもエーゲ海の世界観がはっきりと表れている。フロアや壁面は主にブルーと濃紺色。波や貝殻を思わせる流線形や、ギリシャ芸術の象徴とされるメアンドロス模様がふんだんにあしらわれている。青空を見晴らすプールデッキはすでに乗客で一杯だ。みなドリンクを片手に水着でデッキチェアに寝そべり「ハロー!」と陽気に声をかけてくれる。筆者も早速仲間に加わり、ブズーキ(ギリシャの弦楽器)で奏でられるギリシャ音楽を聞きながら出港シーンを楽しんだ。
■ギリシャの船だからこそ巡れる美島の数々
セレスティアル・ジャーニーのエーゲ海クルーズでは、アテネやテッサロニキといった大都市をはじめ、クサダシ(トルコ)やクレタ島の他、キクラデス諸島の島々を巡る。サントリーニやミコノスはもちろん、ミロスといった隠れた美島にも行けるのがギリシャの船ならではの醍醐味だ。島巡りの皮切りとなるクレタ島(イラクリオン港)に船が到着した。ギリシャ神話とのゆかりが深いこの島で、オリンポスの最高神ゼウスが生まれその子孫がクレタ文明を築いたとされている。16世紀のヴェネツィア時代に現在の形となったクールス要塞はクレタ名所のひとつ。散歩がてら訪ねてみることにした。
要塞は海賊来襲に備えた堅牢な石造りだが、ヴェネツィア様式ならではの優雅さも感じられる。要塞への堤防はすでに観光客であふれ、「地下に財宝が隠されていて、探そうとしたら不幸を招くらしいよ(笑)」と隣にいた観光客が教えてくれた。このように、現実と虚構が入り混じった神秘的な言い伝えがエーゲ海には数多く存在する。それがエーゲ海の魅力を一層引き立てているのだろうと思えた。
その夕刻、海賊と財宝へのオマージュとばかりに、船のオリジナルカクテル「Pirate’s Comfort(海賊のお楽しみ)」を注文することに。宝箱に収められたこのカクテルに「すごい!」と周りの乗客も注目し、なんだか人気者になった気がした夜となった。
翌朝、船はサントリーニ島に着いた。前方にそびえ立つ断崖絶壁は、紀元前17世紀に起こった火山大噴火によって島の中心が陥没し形成されたものだ。クルーズ船なら麓から断崖絶壁を仰望でき、その険しくも神々しい風景を拝むことができる。
■これぞエーゲ海!その美しい景観を堪能する毎日
そうした自然もさることながら、サントリーニといえば青い屋根の教会と白い壁のおしゃれな街並みが有名だ。そこで人気の街イアを訪れることに。イアのメイン・マーケット・ストリートにはカフェやショップが並び、すでに大勢の観光客が散策を楽しんでいる。細い小道を折れると、その先に目当ての青い屋根が見え、さらにその向こうにはエーゲ海が広がっていた。これまで何度も写真で見た「これぞサントリーニ!」ともいうべき風景だ。隣にいたカップルは「他の青い屋根も見に行こう!」と手をつないで歩き去った。島には大小約600もの教会があり、その内約6割の屋根が青で彩られているという。青い屋根を訪ね歩くのも一興かもしれない。
夕方、断崖絶壁の頂上にあるカフェで、世界最高と言われるサントリーニの白ワインからアシルティコを選び飲んでくつろいだ。ついつい長居してもセレスティアルなら大丈夫。どの船よりも遅く出港するので、ケーブルカーが混雑する時間を避けてゆっくり帰船できるからだ。他の船が1隻また1隻と去っていく中、セレスティアル・ジャーニーだけがいつまでも私たちの帰りを待ってくれていた。この日のドレスコードはサントリーニカラーの「白と青」で、みな白や青を取り入れ気軽におしゃれを楽しんでいる。筆者はブルーのワンピースを着てディナーやディスコダンスにいそしんだ。
翌日の寄港地はミコノス島である。この日はテンダーボートで観光名所の集まるミコノスタウンへ直行できるというからラッキーだ。まずはキクラデス建築様式の象徴ともいえる、セント・ニコラス教会とパラポルティアニ教会を訪れた。エーゲ海をバックに浮かび上がる白壁と曲線的なシルエットに見惚れてしまう。その後はリトルヴェニスの水上レストランへ。海沿いに並ぶレストランに入り、あの世界の誰もが知っている「カト・ミリの風車」を眺めるためだ。食事時を外した時間なのですんなりと海上に張り出したテラスへ案内され、はたして、あの6つの風車が3D映像のような存在感で目に飛び込んできた!まさにかぶりつき、しかもほとんど貸し切り状態で絶景を楽しんだ。
夕刻船に帰ると、これから船主催のディナーツアーへ出かける顔見知りの乗客とすれ違った。水上レストランにも行くという。「日中の風車の写真を送るね」と言うと、「じゃあ夜バージョンを送るね!」と約束してくれた。