【解説】ディズニークルーズが東京を発着港に選んだ背景とは
「東京ディズニーランド、実際にある場所は千葉県」。日本人なら誰しもが持っているディズニーランドに関する知識であろう。ただし2028年からはその知識をアップデートする必要がありそうだ。というのも「東京ディズニーランドがあるのは千葉県だが、東京ディズニークルーズは東京発着」となるのだ。
その背景には東京都とオリエンタルランドが11月29日、連携協定を締結したことがある。2028年に新規就航するディズニークルーズの14万トン型客船は東京国際クルーズターミナルが主要な発着地となる。
協定締結式の中で小池百合子東京都知事は「ディズニークルーズは都心や国際空港にも近い、東京国際クルーズターミナルを主な発着地とするとのこと。このことにより都民がクルーズに親しむ機会が増えるとともに、臨海副都心地域のさらなるにぎわいや経済効果も期待できる」と語った。オリエンタルランドの髙野由美子代表取締役会長兼CEOは「大都市圏にあり、アクセスに優れたこのターミナルから出航できることをうれしく思う」と述べた。
ディズニークルーズに関しては、同社が就航を発表した当初から、一部で「ディズニーランドに近い千葉県内の発着の可能性はないのか」という声が上がっていた。けれどもクルーズ業界関係者の中ではその可能性は薄いと見られていた。14万トンもの巨大客船が発着を行うには舞浜は物理的に難しいためだ。千葉県内で現実的なところだと木更津港が候補になるのではという声はあった。ただしやはり木更津港から舞浜は同じ県内でも距離があるのは否めない。
クルーズ専門の旅行会社であるゆたか倶楽部の松浦賢太郎代表取締役は今回の協定締結式より前に、同社の会報誌「NEXT」にて、「ディズニークルーズの発着港は東京もしくは横浜しかないと思う」と語っていた。その背景として同船は1回で3000人~4000人を乗せるわけで、そうなると成田・羽田からのアクセスの良さも考慮する必要があるとした。東京都とオリエンタルランドが連携協定を結んだことで、松浦社長の予測は当たっていたことが証明された。
さらに連携協定の締結式では東京港が発着地になることについて、2者ともに「都心からのアクセスの良さ」「国際空港へのアクセスの良さ」に触れていた。東京駅や羽田空港などへの交通アクセスが、東京港発着という決断に至った大きな理由であることは想像に難くない。
協定締結式の中でオリエンタルランドの髙野由美子代表取締役会長兼CEOは、東京国際クルーズターミナルを視察したことについて言及、「開放感あるターミナルがゲストの歓声で満たされることを考えると、胸が高まった」と語った。東京国際クルーズターミナルは、全面ガラス張りで天井も高く、開放的な造りだ。ゆったりした空間はかつてルイ・ヴィトンのショーも行われたことがある。
オリエンタルランドは今回の協定で同社のクルーズを「ファミリーエンターテインメントクルーズ」と位置付けるとした。東京湾を見渡すターミナルが、「洋上の夢の国」を目指す人々でにぎわう日が近づいている。