寄港地でワイナリーをめぐる楽しさ
ギリシャ船社セレスティアルで行くエーゲ海クルーズ7日間【後編】
プールデッキで紺碧に輝く海を見ながら日光浴をしていると、まばゆいばかりの夏の太陽が降り注ぎ、
肌がじんわりと温まっていくのが心地よい。冬には冷たい風が吹く日もあるが、
海風によって温度や湿度がうまく調整され、比較的温暖な気候が保たれているという。
こうした地中海性気候を持つエーゲ海の島々は、日照時間や土壌の質も相まって、
ブドウ栽培に最適な環境と言われている。
船はクレタ島(イラクリオン港)に着いた。ホメロスの『オデュッセイア』で「四方をワイン色の大海原に囲まれた美しく肥沃な土地」と描かれた島だ。オリンポスの最高神ゼウスが誕生したとされる島でありギリシャ神話とのゆかりも深い。
クレタ島
ミノア時代から続くワインの名産地でワインピクニックを楽しむ
クレタではギリシャ国内外で高い評価を得ているリララキス・ワイナリー(1966年創業)を訪れることに。港からタクシーで30分、標高約480メートルに位置するこのワイナリーは雄大なラシティ山に囲まれている。ビジターがとても多く、ブドウ畑を見学したりビジター棟や屋外テラスでワインテイスティングをしたりとみなとても楽しそうだ。
筆者も早速、ソムリエのマノスさんの案内でブドウ畑へピクニックに出かけた。畑にはクレタ固有ブドウ品種博物館ともいうべき区画があり、コツィファリという黒ブドウや、ダフニ、プリト、メリサキなどの白ブドウが植わっている。ダフニ、プリト、メリサキはかつて島のあちこちでひっそりと自生していて絶滅の危機にあったものの、リララキス家が畑でのブドウ栽培とワイン生産を実現し復活させたという。
それらブドウの息吹を感じながらクレタのワインを味わった。ダフニ(ローレルを意味するギリシャ語)はその名の通り、ローレルの風味と爽やかな酸味が心地よいワインだ。「一度味わえば一生記憶に残るワインですよ」とマノスさんは誇らしげに言う。そういえばワイナリーの愛犬の名前もダフニだったなと思わず笑みがこぼれてしまう。コツィファリ(赤ワイン)はチェリーやスパイスの風味、なめらかなタンニンが魅力的で、赤ワイン好きの筆者は一口で魅了されてまった。クレタの生命とも言うべきワインとともに、ダコスなどのクレタの名物メゼ(前菜や軽食を意味するギリシャ語)を楽しむ特別なピクニック体験となった。
船上でワインテイスティング・セミナーに参加
ワインへの造詣を深める
その日の夕刻もワインの楽しみが続いた。船で開催されたワインテイスティング・セミナーに参加したのだ。「ワインが大好き!」という乗客が多く、会場は100人に迫る盛況ぶり。色、香り、味わい・・・・・・みんなワイワイ楽しみながらテイスティングを実践している。講師はワインスチュワード(ソムリエ)のパトリックさんである。そういえば、ソムリエの先駆けが現れたのはここギリシャだとどこかで学んだな。そんなことを思いつつ筆者もせっせとグラスを口に運んだ。