新たな海を拓く船、MITSUI OCEAN FUJI

ラグジュアリー船として生まれ、これまで世界で活躍してきたクルーズ船がこれから日本近海を中心にどんな道を切り拓いていくのか、期待は高い。
日本語の施設名が付けられた船内に乗船、本誌初の乗船レポートを届けよう。




長いクルーズになるほど利便性が高まる
ラグジュアリー船らしい広い客室
「にっぽん丸」を運航する商船三井クルーズが、2024年12月に新たな船「三井オーシャンフジ」を就航させた。そう聞くとにっぽん丸を受け継いだ、いわば「にっぽん丸2」を想像する人も少なからずいるはずだ。私自身、なんとなくそんな予想をしながら乗り込んだが……。
まず最初に足を踏み入れた客室で新鮮な驚きを覚えた。もともとラグジュアリー船「シーボーン・オデッセイ」として運航されてきた同船は、一番小さいオーシャンビュースイートでも25・3平方メートルある。最も数が多いベランダスイートは26・4平方メートルに3・1平方メートルのベランダが付く。こじんまり落ち着くにっぽん丸に対し、のびのびと過ごせる三井オーシャンフジと、新たな選択肢が増えた。
三井オーシャンフジはバハマ籍のため、規制によりクルーズ中一度は海外の港に寄らなければならない。だからデビュークルーズのシリーズでも最短で5日間、2025年5月に予定されているグランドアジアクルーズは実に66日間と中~長期のコースが中心だ。それこそ66日などロングクルーズになればなるほど、ゆったりとした客室の心地よさが身にしみるはずだ。
「広いですねえ!」
乗船前に行われた船内見学会で、多くの関係者が声をそろえていた場所がある。客室にあるウォークインクローゼットだ。海外のラグジュアリー船では一般的なウォークインクローゼットだが、同船のものは中でも広め。体の大きい男性も楽に入れるサイズ感だ。
このウォークインクローゼットがあるおかげで、長めのクルーズでも荷物に関するストレスは少なかった。ひとまずすべて中に荷物を置いてしまえば、散乱することもなくなる。
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広さのみならず、客室でのサービスもにっぽん丸とは異なる。客室内のルームサービスは24時間無料(アルコールなど一部有料メニューあり)。朝食は洋食・和食のセットメニューが用意されている。特に小さなおかずが様々に並ぶ和食は、さすが日本の船会社だ。
客室は7種類あるが、一番多いのがバルコニー付きのベランダスイートだから、滞在中一日はバルコニーでの朝食を楽しみたい。
ルームサービスのメニューにはデミグラスソースで煮込んだハンバーグなどに加え、そば・うどん、そして「紅鮭のり弁」までしっかりした食事がある。試してみたら、鮭はちょうどいいふっくらとした焼き加減。にっぽん丸ではメインダイニングで夜食の提供があったが、これに代わるものとして客室内での楽しみが増えた。





多彩なメニューの数々
世界の料理を一船で味わう
さらに三井オーシャンフジは食の選択肢も多彩だ。特に新鮮に感じたのは、ビュッフェレストラン。富士山頂部の8つの峰を指す「八葉」から名付けられた「テラスレストラン八葉」は、お米や味噌汁といった和食のほか、各国料理が充実していた。とある日は欧州のドイツやハンガリーの名物グラーシュが並んでいた。中華料理やイタリア料理、寿司など、その日によって料理のテーマが設けられていることもある。
「毎晩ビュッフェに来ても飽きないように、メニューは毎日違うものを出しています」と、にっぽん丸でもおなじみの中山勝利総料理長。だからここは毎日通っても飽きない。八葉の名の通り、多彩な世界の料理が味わえるのだ。
このテラスレストラン八葉では夜は寿司メニュー(予約制有料)も味わえる。乗船したクルーズでは活況を呈していた。
ちなみに多くのクルーがおすすめのスポットとして挙げていたのが、船尾のテラス席。屋根もあり、大海原を眺めながら料理を味わうひとときは、まさにクルーズならではの醍醐味だろう。
そしてメインダイニングの「ザ・レストラン富士」では、にっぽん丸同様に洋食・和食のフルコースを提供。にっぽん丸との違いは、一部二部制と時間が区切られているわけではなく、フリーシーティングであること。
乗船したクルーズでは特選和食と題し、「茹でズワイ蟹」「牛肉のカニみそのせ焼き」などカニ尽くしのコース料理が出た日もあった。「食材に関して、気を遣っています。やはりラグジュアリー船らしい、上質な食材を仕入れています」と中山総料理長。

