クロワジー・ヨーロッパが魅せる
ボルドー発着リバークルーズの愉悦

その中心部に流れるガロンヌ川から、欧州のリバークルーズ船社クロワジー・ヨーロッパのリバークルーズに乗船した。
4泊というコンパクトな日程ながら、シャトーめぐりはもちろん、フランスの村々も料理も社交も楽しめた日々を紹介しよう。


栄華を極めたワインの名産地ボルドー
映画の舞台にいるような荘厳な街並み
ボルドー市街地に降り立ち、まずは圧倒された。「月の港」というロマンチックな名前が付けられた川沿いの光景は、右手にたゆたうガロンヌ川、左手にネオクラシック様式の歴史的建造物が立ち並んでいる。建物は外観はもちろん、背の高さまでビシッと揃っていて、その完璧なまでに美しく彩られた街にいると、なんだか映画の舞台に立っているよう。その景観美は世界遺産にも指定されている。
ボルドーといえば? と聞かれたら、多くの人が「ワイン」と答えるだろう。ワインはこの街の重要な産業であり観光資源だ。ガロンヌ川にはワインの産地をめぐるクルーズ船が何隻か停泊していた。
今回乗船するのは欧州の河川を中心に38隻もの船を運航するクロワジー・ヨーロッパの「シラノ・ド・ベルジュラック」。古典の名を冠した船だが、その複雑な発音はいかにもフランスの船という印象だ。
ただ難しい船名とは裏腹に、船着き場は市街地にほど近く、アクセスがいい。しかも近年はSNSの「栄えスポット」として有名なブルス広場までも徒歩圏内。
そのうえ乗船日はボルドーに1泊するから、船に荷物を置いた後、ボルドーの街自体も楽しめる。
今回は現地4泊、日本からも1週間以内で往復ができるコンパクトな日程。現役世代のワイン好きにももってこいのクルーズだ。
船にはチェックイン時間よりだいぶ前に到着してしまった。イレギュラーな乗客にも関わらず、クルーは快く荷物を預かってくれた。さらにボルドーのおすすめの観光地を教えてくれ、「すてきな陽気のボルドーを楽しんで!」との声とともに見送ってくれた。

ワイン交易の中心にあったガロンヌ川沿いで
ワインにまつわる知識と交流を
ボルドーを訪れたら、ぜひ行きたい場所がある。「シテ・デュ・ヴァン」という名のワイン博物館だ。ワインボトルを彷彿とさせる流線形の建物の中には、ボルドーのみならず世界中のワインの知識が詰まっている。例えばワインの香りをかぎ分ける装置などがあり、展示による知識だけでなく、さまざまな体験ができるのが特徴だ。
「重めのフルボディがいい? それとも軽めのフルーティーなものがいい?」。ワインの試飲ができる最上階では、スタッフが試飲できるワインについてていねいに解説してくれた。この街を訪れる人は皆、ワインという共通項で会話が弾む。




博物館の最上階からはボルドー市街が一望できた。その中心にあるのが、リバークルーズの拠点となるガロンヌ川だ。
1世紀ごろからボルドーは貿易港として栄えてきた。途中約3 0 0年の間はイギリスの支配下に入ったのち、18世紀にはアメリカやカリブ海との三角貿易が盛んになり、数々のネオクラシック様式の建造物が建てられるほど栄華を極めた。
「交易の場はガロンヌ川であり、この川はボルドーの繁栄の象徴です」。乗り込んだクロワジー・ヨーロッパの船内で、立派な髭をたくわえた講師はガロンヌ川についてこう語った。「左岸、メドックやクラーブは土壌が砂利質でカベルネソーヴィニヨンを主体とした力強いワインが特徴。右岸は粘土質でメルローを主体とした柔らかく豊かな味わいのワインが多く生産されています」。そんな知識を得てから実際にその知を訪れ、ワインを試飲する──「これぞ大人の修学旅行だな」。講義に耳を傾けながらそう思った。


