「にっぽん丸」飛んでクルーズ沖縄
美ら島で感じる初夏の風、香り
島それぞれの持ち味、魅力
眼前にはきらめく夜景が広がり、那覇空港の一本の滑走路に飛行機が着陸する。東京の4月は春とはいえ夜はまだ冷える日が多いが、デッキに出ていても寒さはなく、湿っぽい空気が肌をなでるのを感じ、南国に来たことを実感した。
出航は21時、夕方に乗船しディナーを終えた後にスポーツデッキに向かうと、出航にあわせ那覇港周辺の夜景を観賞しようとクルーズディレクターの永井晶さんを筆頭に乗客たちが集まっていた。
「にっぽん丸」の定番クルーズ「飛んでクルーズ沖縄」。今年実施された全4コースのうち、今回、初寄港となった伊江島と与那国島をめぐるDコースに乗船した。
「飛んでクルーズ沖縄」やその前後で那覇発・着のクルーズが数本行われるのが恒例だが、うち那覇を夜に出航し夜景を楽しめるのは年に1回。台湾へ寄港して戻ってきた直後の航海だけだそうだ。
●純白のユリが咲き誇る島
翌朝、デッキに出るとにっぽん丸はすでに伊江島沖に錨をおろし、むわっとした空気の向こうにつんととがった山がそびえていた。伊江島の中心にそびえ立つ172メートルの城山。通称タッチューと呼ばれる伊江島のシンボルだ。この日はあいにく曇り空だったが、目線を下げると海は曇らず、真っ青。早速に通船に乗り込み、伊江島へと移動した。
伊江島は面積約23平方キロメートルの広さ。自転車で一周回っても2、3時間ほどで、島の外側を回れば坂道もそれほどきつくないというので、思い切ってレンタサイクルをして出かけてみた。
漕ぎ出すとすぐに、青々とした葉を茂らせた植物が左右に広がった。島の人に聞くと、葉タバコだという。伊江島の農家は葉タバコのほかに島らっきょ、電照菊、サトウキビと、季節ごとに栽培するのだそう。葉タバコ畑と、所々に伊江島のブランド牛、伊江牛の飼育小屋がある景色のなかをひた走るのはとても爽快だった。
子宝の神様がいると言い伝えられるニャティヤ洞、60メートルを超える断崖の下から水がわき出ている湧出と、西から順にまわっていき、今回の伊江島観光での目玉である伊江村リリーフィールド公園を目指した。この日、日本一早く行われるという伊江島ゆり祭りが初日を迎えていた。
大きく湾曲した道を下ると、思わずわーっと声を上げてしまうほど見事な白いじゅうたんが現れた。その数なんと100万輪のテッポウユリだ。初日なので、まだ三分咲きくらいだろうか。近づくと、ふくらんだつぼみのほうが多いが、それでも甘く華やかなユリの香りが風に乗ってほのかに漂っていた。にっぽん丸の「飛んでクルーズ沖縄」、実に良いタイミングで設定されている。