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【特集】第17回 商船三井客船 山口直彦代表取締役社長に聞く、 「にっぽん丸」運航再開の道筋と感染症対策
日本客船
2020/10/01
特集「クルーズ新時代に向けて」

第17回
商船三井客船 山口直彦代表取締役社長に聞く、
「にっぽん丸」運航再開の道筋と感染症対策

いよいよガイドラインも制定され、日本船の運航再開が見えてきた。「新しいクルーズ」が模索されるいま、「にっぽん丸」を運航する商船三井客船は、どんな対策を行い、そしてどんな新たな楽しみを提供しようとしているのか。山口直彦代表取締役社長に聞いた。


●「安全こそグッドサービス」

――にっぽん丸の現状について教えてください。

「にっぽん丸」は約2カ月間に及ぶ改装工事を終えて、4月から運航を開始すべく集客を進めてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によりこの計画を断念、運航を見合わせて現在に至っています。

この間、弊社では様々な感染防止策を行ってきましたが、先日国土交通省の監修による業界ガイドライン「外航クルーズ船事業者の新型コロナ感染予防対策ガイドライン」が発出されましたので、その遵守を条件に、運航再開に向けて踏み出すことになりました。

このガイドラインは陸上のどの業界のガイドラインと比べても遜色がなく、予防策だけでなく、万が一有症者が発生した場合の対応、すなわち感染拡大をどう食い止めてクラスターを防止するかに踏み込んでいる点で画期的だと自負しています。ご意見を頂戴した有識者会議の先生方、国土交通省や自治体をはじめ関係者の皆さまのご尽力に敬意を表し、改めて感謝申し上げたいと思います。

皆様のご期待に応えるべく、「安全こそグッドサービス」というモットーのもと、コロナ感染を「船に持ちこまない」「うつさない」そして「広げない」という三つを徹底します。

船社として最大限の安全配慮を前提に、寄港予定地の行政の皆さまとしっかり連携し、さまざまな想定に対してしっかり準備して、お客様に安全で安心した船旅を提供していきます。

――運航停止中もさまざまな訓練や対策をされていたと聞きました。

感染防止においては、消毒ももちろんですが日々の清掃のプロセスも重要です。このため、運航停止期間中に船内の清掃消毒を全面的に見直し、医療施設などでの作業実績が豊富な(一社)日本緑十字衛生公社の指導を得て、清掃の指導訓練も実施し、乗組員にも環境衛生士の資格を取得させました。また万が一の事態において冷静沈着に対応できるよう、繰り返し、船陸一体の訓練を行っています。

――当面のクルーズ再開方針とスケジュールについて教えてください。

国土交通省の「クルーズの安全・安心に関わる検討・中間とりまとめ」に従い、まずトライアルクルーズを実施し、検証を得たうえで国内のショートクルーズから再開することにします。先のガイドラインに準じた商船三井客船「新型コロナ感染症予防対策マネジメントマニュアル」については、すでに第三者機関である(NK)の審査を受け、来年まで有効な認証を取得しました。

クルーズの長さについては、年内は2泊程度とし、航海日が連続することはないスケジュールになります。にっぽん丸の乗客定員は最大523名なのですが、当初はその4割程度の乗客数でスタートし、段階的に引き上げ、今期中は6割程度を上限とします。加えて203室の約1割に当たる20室程度を販売せずに、万一感染者が出た場合に隔離できるように備えます。そしてもし今後全国規模の緊急事態宣言などが再び出されることがあれば、速やかに催行中止をいたします。

実際の運航スケジュールですが、トライアルクルーズでは、有識者の先生やガイドラインやマニュアルの作成に携わった関係者にご参加いただき、改善すべき点があるか、検証していただければと思っております。このプロセスは10月下旬までに完了したいと思います。11月以降には実際に営業航海を行いたいと思っていますが、その前に、今春の「にっぽん丸」の改装をご紹介する「お披露目クルーズ」を実施できればと考えています。


●「持ち込まない」「感染させない」「広げない」の三本柱

――「にっぽん丸」の感染予防策とは、どのような内容でしょうか。

先に述べましたように、感染を持ち込まないこと、船内で感染させないこと、そして感染を拡げないことの3つの柱からなります。まず「持ち込まない」対策についてですが、乗船前に健康アンケートをご提出いただき、検温をさせてしていただきます。当日のご乗船拒否の可能性があるなど、お客さまには負担をお願いすることとなりますが、ご理解をお願いできるとありがたいです。

乗組員に関しては、休暇中から感染防止対策の順守を徹底し、乗船に先立ちPCR検査を実施いたします。フィリピン人クルーについては、フィリピン出国時、日本入国時の2回のPCR検査が陰性であった場合のみ乗船が可能となりますが、その後もう一度弊社での検査で陰性が出たことを確認してからの就労となります。日本人乗組員に関してもPCR検査を実施、加えてこれらの乗組員には定期的な検査も実施いたします。

次に「うつさない」ために、先にお伝えしました(一社)日本緑十字衛生公社の指導もの船内の清掃消毒を全面的に見直しました。場所や目的に応じて適正な薬剤を用い、適正な手順で清掃する訓練を行いました。船内各所にアルコール消毒を配置し、ダイニングではソーシャルディスタンスを確保するための座席の配置変更やアクリル板などを設置することにしました。

ガイドラインには記載されていない対策ではありますが、空調についても対策をしています。にっぽん丸はすべての客室ならびに大半の公室は外気100パーセントで、計算上1時間に5〜6回の換気に相当する風量となっています。これに対して廊下や一部の公室や乗組員区画の空調については一定比率循環気を混合していますが、このたび送風装置に抗ウイルスフィルターと空調システム用UVC(紫外線)殺菌灯を設置しました。加えて各客室にもコロナウイルスを不活性化する空気清浄機を配置いたしましたので、安心してお過ごしいただけると思います。

食事に関してはセルフサービスを中止するなど見直し、またソシアルダンスやカジノコーナー、テーブルコーナーなど密の状態が起こりやすいイベントに関しても見直していきます。できるだけ船内各所で複数のイベントを実施することで、分散してご参加いただける工夫をしていきます。

最後に「広げない」対策ですが、不調を感じたお客さまや乗組員の早期発見と隔離がポイントとなります。乗務員は1日2回の検温と健康申告を義務付け、お客さまにも日々の検温や手洗い、健康不良時のすみやかな申告などをお願いすることになります。万が一疑わしい有症者が出た場合は、すみやかにイベントは中止し、お客さまには自室で待機していただきます。

そのほか弊社独自の対策として、検温については乗下船時のほか、船内の複数の場面で検温データと乗客データをリンクさせて記録や追跡ができる非接触型AIサーモグラフィーを2台導入しました。

さらに濃厚接触者を特定するのに役立つ船内システムを開発中です。これは位置情報から船内での濃厚接触者を絞れるシステムです。

またあらかじめ販売していない客室の1室には陰圧テントも設置、有症者が出た場合など、隔離用に使用します。こうした有症者の方が下船時に一般のお客さまと交錯しないように、特別な下船経路も確保しています。加えて船内で新型コロナ感染診断ができるように、抗原検査キットも搭載しています。


●港があっての船

――港との連携についてはいかがでしょうか。

感染予防、拡大防止策の実施のためには、乗下船地や寄港地の港湾の方々との連携が不可欠です。もちろん港湾サイドの関係者の皆さまの安全も確保しなければいけません。このために、弊社は丁寧な説明や入念な事前協議を進めさせて頂きたいと思います。

しかし万全の対策を行っていても、船内での感染者や有症者の発生の可能性を100パーセント否定するということは難しいでしょう。船内で徹底した対策を講じることで、クラスターに発展させない努力を行いますが、それでももし発生した場合には、感染者や有症者の医療搬送、濃厚接触者の帰宅までの手配、さらにそれ以外のお客さまの下船など、一連の動きをスムーズに行うため、行政や地元住民のご理解をいただく必要があります。

加えて、根拠のない差別や風評の起きないように、正しくタイムリーな情報公開につとめなければなりません。これらの点につきまして、弊社は皆さまのご理解を得る努力を続ける所存です。

母港という言葉がございますように、船にとって港は母のようなものです。港あっての船、船があっての港湾だと思います。引き続きご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。


●自分なりの「お気に入りの場所」を見つけて

――今後の「新しいクルーズ」はどんなかたちになるでしょうか。

そもそもクルーズ船での旅は、大海原を眺めてリラックスしたり、おいしい料理を楽しんだりと、健康にとても良い旅行です。クルーズ船ですと「スペースレシオ」いう言い方をしますが、一人当たりの総トン数、この場合は重さよりも容積に近い概念ですが、これが「にっぽん丸」の場合、50トンを超えています。隣席との間隔が決められたほかの交通機関と比較しても、はるかに密のない、広々とした空間を確保しています。

もちろん決まった時間帯に人が集まるショーやダイニングなどについては交通整理が必要で、入場制限などご不便をおかけするかもしれませんし、当面は見合わせるイベントも出てくるでしょう。

これからのクルーズライフでは、船内で団体行動をとるのではなく、混んでいれば別の場所に行ってみる、別のイベントを覗いてみるというような行動もおすすめします。お一人お一人の心地よい空間、いわば「コージーコーナー」を見つけるといいますか。「にっぽん丸」にはそうした空間がたくさんありますし、今後は日中に活用されていなかったドルフィンラウンジや、逆に夜は静かだったホライズンラウンジなどもご活用していただける工夫を考えています。

――クルーズのファンに向けて、またにっぽん丸のファンに向けてメッセージをお願いします。

近々発表する下期から来年の寄港地は、これまでとは違って、国内のショートクルーズが中心になります。例年ですと海外クルーズを実施していた時期もありますが、その代わりに国内の寄港地をベストな季節に織り込むことにしました。錦秋の季節には紅葉の名所を訪ねたりといったコースですね。またこれからの時期は、食べ物のおいしい季節ですので、そうした各地のおいしいものを味わっていただければと思います。

移動がまだはばかられるという方には、日本の各地を発着するワンナイトクルーズで非日常の気分を味わっていただければと思います。例年以上のクリスマスクルーズをご用意させていただきます。

さらに今年はゴールデンウィークや夏休みの定番クルーズが催行中止とさせていただいたのもあり、例年より早く、2021年の夏クルーズも何本か発表させていただきます。

当面クルーズ業界はチャレンジが続くと思います。しかし今までも苦しい時代を日本のクルーズ業界は乗り越えてきました。今後も皆さまのサポートがあれば、きっとすばらしいクルーズが実施できると思っております。応援をよろしくお願いします。

インタビュー:吉田絵里(CRUISE編集長)
2020年9月23日実施

【特集ページ】
https://www.cruise-mag.com/special/2020afc/index17.html

写真は「にっぽん丸」を運航する商船三井客船の山口直彦代表取締役社長







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