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日本長距離フェリー協会尾本会長、年頭あいさつ

2022.01.05
業界

日本長距離フェリー協会の尾本直俊会長(商船三井フェリー社長)は「まずは厳しい事業の安定化に努め、同時に若年船員の確保、高速道路の料金割引制度、瀬戸内海の航路規制などの重要課題にも並行して精一杯取り組んでいく」など新年のあいさつをした。概要は以下のとおり。

 

一昨年以来の新型コロナウイルス感染症による経済活動の低迷に加え、部品や原材料の不足、資源価格の顕著な上昇もあり、引き続き厳しい状況だったが、年末に向けた感染者の劇的な減少を背景に人々の活動が徐々に活発になり、各種政策を起爆剤にした経済活動の活性化、景気の回復が期待される。

 

長距離フェリー業界においても、新型コロナの影響により、旅客・乗用車・トラック貨物いずれも大幅に輸送需要が減少し、未だ顕著な回復が見られない。さらに燃料油価格の高騰により、各事業会社は過去に経験の無い大変厳しい状況に置かれた。その中でも私どもは「旅客船事業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」に則り、感染予防対策や抗菌対策に手を緩めることなく取り組んでいる。まずは厳しい事業の安定化に努め、同時に若年船員の確保、高速道路の料金割引制度、瀬戸内海の航路規制などの重要課題にも並行して精一杯取り組んでいく。

 

現在、カーボンニュートラルの推進はグローバルな重要課題だ。長距離フェリーをはじめとする海上輸送は「環境に優しい大量輸送機関」であり、物流におけるCO2削減に極めて有効な手段だ。長距離フェリー事業各社においては、大型化、省エネ化はもとより、LNG燃料船などの次世代型の新造船の建造も進んでおり、より環境負荷の少ない輸送手段とすべく船隊整備を進めている。

 

さらに、トラックドライバーの不足と高齢化が進む中、2024年にはドライバーの残業規制が本格化する。長距離フェリーによる輸送区間は「大型トレーラーによる無人航送」によりドライバーの長時間労働の回避や人手不足対策となり、課題の有力な解決法だ。今後も一層モーダルシフトの促進に務め、国内物流の能力維持に寄与していく。

 

欧州を中心に船舶の自律運航への取り組みが進む中、国内フェリー業界においても「運航の効率化」「乗組員の負担軽減」「安全性の向上」などを念頭に、ITをはじめとした新技術の活用を通じた各種検討・実証実験への協力を開始している。加えて、洋上の通信環境の改善による顧客・乗組員の利便性向上、陸上と同じような職務環境の整備による船の生産性・安全性の向上も目指している。

 

長距離フェリーは、災害時の物資輸送手段としても活躍している。西日本豪雨災害では陸上交通の代替ルートとして、北海道胆振東部地震では緊急輸送手段としてフェリーが活用された。自然災害による陸路の寸断や陸上施設が被災した際の代替輸送、被災地への緊急物資輸送、自衛隊の輸送支援などにも機動的かつ積極的に取り組んでいる。

 

当協会の加盟事業者は、海上輸送における事業特性を生かし、環境に配慮し、革新的な取り組みを行う公共交通機関として活動していく。

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