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商船三井、3万5000トン級クルーズ客船2隻新造を決定
商船三井は25日、同社の取締役会にて外航クルーズ船2隻の新規建造方針を決定したと発表した。新造するクルーズ客船は、遠洋区域を航行可能な3万5000トン級の2隻。同社の子会社である商船三井客船が運航する「にっぽん丸」(2万2472トン)同様に日本籍を予定しており、運航も同様に商船三井客船が担う。総投資額は約1,000億円で、建造造船所は未定。2027年頃に第1船の竣工を予定している。第2船の竣工時期は未発表。
3万5000トンの新造船2隻の乗客定員は600人(一室2人使用時)、乗組員は320人を予定。乗客一人あたりのスペースレシオは約58.33トンとなり、現在の56.18トンの「にっぽん丸」からややゆったり度が増す。また、乗客一人当たりの乗客数を示す乗組員比率も「にっぽん丸」の約1.74人から約1.88人と増加。よりきめ細かいサービスを提供することを目指す。日本人乗客のみならずインバウンド需要なども視野に入れる。
商船三井は経営計画「Rolling Plan 2022」に掲げた「ポートフォリオ戦略」に沿って、海運事業の以外の事業強化に取り組んでおり、今回の新造クルーズ船はその一環。「海運市況との連関性が少なく、今後拡大が期待される国内外のクルーズ需要を取り込むべく2隻の建造方針を決定した」としている。さらに本件による同社の2023年3月期連結業績への影響は軽微であるが、「中長期的に業績の向上に資するものと考えている」とした。
商船三井客船は1972年に南米航路に投入していた「あるぜんちな丸」を初代「にっぽん丸としてクルーズ客船に改装して以降、クルーズ事業を中心に展開してきた。その後ブラジルから買船した「セブンシーズ」を2代目「にっぽん丸」とし、1981年に見本市船「新さくら丸」を購入しクルーズ客船に改装。2隻体制となった。1989年には日本初の本格的なクルーズ客船「ふじ丸」を、そして1990年に現在の3代目「にっぽん丸」を就航させ3隻体制に。その後新さくら丸の引退やふじ丸の日本チャータークルーズへの移管を経て、にっぽん丸の1隻体制でクルーズ事業を展開してきた。第1船就航時点の「にっぽん丸」の動向は未定だが、今後の展開によっては久々の2隻体制、3隻体制になる可能性もある。
日本船籍のクルーズ船に関しては、「飛鳥Ⅱ」を運航する日本郵船グループの郵船クルーズは21年4月、ドイツのマイヤーベルフトに新造クルーズ船1隻を発注。一方、「ぱしふぃっく びいなす」を運航する日本クルーズ客船は11月に客船事業からの撤退を発表していた。
写真は商船三井客船が運航する「にっぽん丸」。同船が約2万2000トンに対し、新造船2隻は3万5000トンとサイズアップする。