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2024年度日本クルーズ&フェリー学会総会・講演会開催
2024年11月9日、大阪公立大学難波サテライト I-siteなんばにて2024年度日本クルーズ&フェリー学会総会・講演会が行われた。プログラムは下記の通り。
セッション1では関西・四国の港湾関係者4名が登壇、クルーズ客船の受け入れに関する発表ならびに討論が行われた。各港の環境整備や現状の受け入れ態勢の紹介に続き、学会参加者からのアンケートを元にしたパネルディスカッションを実施。アンケート回答者全員が「日本発着クルーズの魅力を広めることで、日本人のクルーズは今後伸びると思う」が答え、うち41パーセントの人が現状の10倍、20パーセントの人がは今後現状の30倍、欧米並みに伸びると回答した。
港湾関係者からは「持続可能な財源確保が重要」「現在は港湾使用料を徴収していないが、徴収する必要性を感じている」「客船入港によって地元経済へ効果が表れるスキームが必要」など経済面に関する課題への言及があった。
さらには四国ではオーバーツーリズムに対する懸念の声もあがっていると言い、また各地でバスやタクシーの二次交通が不足していることが指摘された。これに対し、各交通機関と提携して臨時便を運航する、地域のバス協会に事前に一括オーダーするなどの対策が挙げられた。
セッション2では「クルーズ業界の未来」と題され、郵船クルーズ、商船三井クルーズの新船や今後の戦略の紹介がなされた。さらに国土交通省港湾局クルーズ振興室長によって訪日クルーズ客船の現状について述べられた。
郵船クルーズの新造船「飛鳥Ⅲ」に関しては、飛鳥Ⅱと異なるコンセプトが紹介された。「飛鳥Ⅱは乗組員との接点を多く持つ、提案型の客船。飛鳥Ⅲは選択肢をたくさん用意し、お客様自身で選択して自分たちのクルーズを創り上げる客船」という差別化が紹介され、「サービスの内容や価値観で選んでもらいたい」と語った。
商船三井クルーズが12月1日から運航を開始する「三井オーシャンフジ」が近々改装を終え、社員など関係者を乗客に見立てた習熟クルーズが行われることが紹介された。また商船三井グループの計画として、現在海運事業対非海運の割合が75対25にあるのに対し、2035年には60対40まで非海運事業の割合を引き上げることが目標であると語られた。
その後の訪日クルーズ客船の現状に関するプレゼンテーションでは2023年の外国クルーズ船の日本への寄港回数は1264回であり、コロナ禍前のピーク時(2017年)の約63パーセントまで回復していること、太平洋、瀬戸内の寄港回数が伸びていることなどが発表された。さらに2023年に寄港した港の数は92港にのぼり、コロナ禍前のピーク(2019年)に比べて約1.4倍になっており、2025年には100港を目指すことが述べられた。
セッション3は「客船の技術」と題され、環境対応型ハイブリッド推進システムの提案、自律運航への取り組み、客船運航におけるAI技術の活用など技術面での発表、議論がなされた。
総合討論ではクルーズの販売、運航、広報・周知に関して発表が行われ、弊誌編集長の吉田も登壇した。
<2024年度日本クルーズ&フェリー学会総会・講演会 プログラム>※敬称略
■セッション1 (10:10~12:00) : パネルディスカッション クルーズ大阪湾&瀬戸内海(司会:赤井伸郎)
1-1 神戸市港湾局瀬沢孝至
1-2 大阪港湾局 事業戦略担当部長 友田伸司
1-3 和歌山県の各港 和歌山県港湾空港局長 花田祥一
1-4 四国各港のクルーズ受入状況 四国地方整備局港湾空港部長 池町 円
■セッション2(13:30~15:00) : クルーズ業界の未来(司会:梅田直哉)
2-1 飛鳥クルーズ 新造客船最新情報 郵船クルーズ㈱ 執行役員 管理部長 小松崎有子
2-2 「Mitsui Ocean Fuji」と「Mitsui Ocean Cruises」が目指す世界 商船三井クルーズ㈱代表取締役社長 向井恒道
2-3 訪日クルーズ客船の現状 国土交通省港湾局クルーズ振興室長 林雄介
■セッション3(15:00~17:00): 客船の技術(司会: 片山徹)
3-1 LNG 専燃エンジン+バッテリ+軸発兼推進電動機からなる環境対応型ハイブリッド推進システムの提案
川崎重工業 舶用推進システム総括部 池田賢治
3-3 自律運航への取り組みと運航支援システム「ナビン」のご紹介 三菱造船 マリンエンジニアリングセンター 事業戦略推進室 電化デジタル化グループ長 廣田一博
3-4 客船運航におけるAI技術の活用 大阪公立大学海洋システム工学分野 橋本博公・檜垣岳史
3-5 船舶用新燃料のライフサイクルアセスメント 大阪公立大学海洋システム工学分野 中谷直樹