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郵船クルーズ、新造船建造契約を締結、2025年引き渡し
郵船クルーズは2021年3月末にドイツのマイヤー・ベルフト造船と新造船の建造契約を締結した。31日に都内で開催した記者会見で明らかにした。2025年引き渡し予定で、船名は未定。
新造船は5万1950トンを予定。現在同社が運航する「飛鳥Ⅱ」の5万400トンと比較して若干サイズアップするものの、乗客定員は現在の827人から740人と約85パーセントに抑え、乗客一人当たりのスペースでも世界でもトップクラスを確保する。全客室にバルコニーが付くのも特徴。
2020年の改装で飛鳥Ⅱに設置して好評を博している露天風呂も設置する。船の前方に設ける予定で、船の進む方向を眺めながらの入浴が楽しめる。15カ所を超えるレストランやカフェ、バーも設置する。寿司を含めた和食レストランや肉とワインを楽しめるグリルレストラン、読書を楽しめるカフェ、重厚な雰囲気のバーなどを予定している。
性能的な特徴では、環境負荷軽減などのため、液化天然ガス(LNG)燃料、低硫黄燃料、ガスオイル燃料の3種の燃料に対応するデュアル・フュージョン・エンジンを搭載することが筆頭に挙げられる。中型客船で世界で初めてLNG燃料に対応する。
船型は現在の飛鳥Ⅱから比して船首は短く、船尾が長い造形になる。飛鳥Ⅱよりも喫水が浅くなるため、これまでよりも入港できる港が増える可能性がある。
記者会見には郵船クルーズの坂本深社長、日本郵船株式会社の長澤仁志社長、アンカー・シップ・パートナーズの篠田哲郎社長が出席した。
坂本社長は「これまでに養ってきた和のおもてなしに最新のテクノロジーを加えた『飛鳥ラグジュアリー』を幅広い年齢層に提供したい」と語った。
日本郵船の長澤社長は、「新造船は環境性能に優れ、感染症対策を施したものになる。ますます多くの方に客船の楽しさを味わってもらえると確信している。地方創生といったこともこの事業が貢献できるのではないか」と述べた。
資金調達を担ったアンカー・シップ・パートナーズの篠田社長は、「このプロジェクトは全国の地方銀行30行がサポートしている。現在コロナによる影響で短期的な制限があるが、本プロジェクトの将来性を見据えて、ぶれることなくサポートをしてもらっている。日本のクルーズ文化を新たなステージに進めようとしている郵船クルーズをサポートしたい」と語った。
郵船クルーズはこれまで初代「飛鳥」(1991~2006年)を15年間、現在の「飛鳥Ⅱ」(2006年~)を15年間運航してきた。飛鳥Ⅱの船齢は、前身「クリスタル・ハーモニー」の初就航から数えてすでに30年を超え、新船の登場が長年待たれてきた。昨春に主機関部分などを大規模改造・改装している。2船とも三菱重工業(長崎)で建造されており、海外での建造は初となる。
写真は左から新造船の船体外観、アトリウム、ビスタラウンジ(いずれも完成イメージ。仕様は変更になる可能性あり)。