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日本船の感染症対策レポート、オンライン会議第5回

2020.11.11
業界

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたクルーズ産業について意見交換するため、スマートクルーズアカデミー(主宰=大阪大学・赤井伸郎教授)は11月6日、第5回目となるオンライン会議「クルーズ振興のための情報共有サロン型ONLINEコンファレンス」を開催した。今回は「クルーズ船の感染症対策:トライアルクルーズ乗船機」と題し、「飛鳥Ⅱ」「にっぽん丸」に乗船した業界関係者の報告を受けた。 飛鳥Ⅱのトライアルクルーズに乗船した高知県高知県土木部港湾振興課の林真弓主幹は、「飛鳥Ⅱの船内では非常に緻密な感染症対策を実施していると感じた。乗船される方はこうした対策を目の当たりにしているので、われわれ受け入れる側の港湾も丁寧な対策をしなければならないと感じた」と感想を述べた。 同じく飛鳥Ⅱに乗船したシルバーシークルーズの糸川雄介日本・韓国支社長は「飛鳥Ⅱでは同室の人以外は同席で食事がとれないようになっていた。中には一緒に食べたいという乗客もいるかもしれないが、感染症対策を優先した結果だろう」と分析。 加えて同氏は米国の状況も解説。CDCが運航停止期間を終えたことに触れ、「2021年1月~3月にかけて運航再開する船会社が出てくる。現在シルバ氏―クルーズでもプロトコルを制作中だ。CDCは乗船時の抗原検査、PCR検査に加え、下船時の検査も義務付けている。これを実施するとなると、クルーズが終了して乗客が下船したその日に、次のクルーズの乗客が乗船するのは難しいのではないか」と指摘した。 「にっぽん丸」に乗船した舞鶴市舞鶴市役所みなと振興・国際交流課の小島宏課長は、乗船したときの様子が京都新聞に取り上げられたことに触れ、「クルーズ振興を担う自治体関係者も、市民や関係者に対して、クルーズの安全性や楽しみを伝えていく啓蒙活動が必要だ。京都舞鶴港では2021年5月3日に『にっぽん丸』が入港予定で、運航再開後の初来航になる。もう一度、歓迎機運を盛り上げていきたい」と語った。 「にっぽん丸」がチャータークルーズで運航再開したときの発着港である愛媛県新居浜港務局の西田光昭氏は、同クルーズの様子を報告。クルーズには乗客186名、スタッフ17名が乗船し、岸壁では関係者150人、一般の方訳200人など約360人で岸壁で歓迎行事を実施したと明かした。その際には乗客と歓迎行事への参加者の動線を分けることを実施。また地元の保健所と5回の協議を重ね、万一感染者が出た場合の対策を協議したと明かした。 この報告を受けて「にっぽん丸」を運航する商船三井客船の山口直彦社長は、「実はこのクルーズは当初、五島列島に寄港する予定だった。離島は万一感染者が出た場合の医療体制の問題もあり、長崎県側から入港が難しいと言われていた。その折に同じ長崎県の佐世保市港に手を挙げていただき、受け入れてもらえた。このように、同じ県内の港湾が連携していただけると、今後も船社としては非常にありがたい」と述べた。これを受けて函館国際貿易センターの前野泰孝氏は、「函館は来年まで客船の受け入れの予定がない。北海道内で足並みをそろえて準備ができれば」と抱負と語った。 また同社長は今後の事業の持続可能性について質問を受け、「現在、乗客定員を減らしており、またクルーズとクルーズの間の日程も空けているというのもあり、現状すぐに黒字化というのは難しい」と応えた。加えて「クルーズというのは楽しくなくてはならない。感染症対策をして安心して乗っていただけるのはサービスの原点ではあるが、さらに楽しかったと言ってもらいたい。その両立が課題だ」と語った。 寄港地ツアーについても話が及び、同社長は「寄港地では弊社が提供するツアーに参加していただいてもいいし、自由行動も可能だ。ただし万一のときのためにお客さまが寄港地でどういう動きをされたか把握したい思いもあり、行動計画表を出していただいたり、また船に戻ってきたあとに申告していただくことを考えている」と述べた。 高知県の林氏は「11月30日の飛鳥Ⅱ入港が今年度の最初の受け入れになるが、現在は入港時の動線の確認をしたりなど準備している。ツアーバスやシャトルバスがどこに着くかも確認しており、県として商店街の方々などへ説明している」と、寄港地として備えをしている現状を語った。

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