クルーズニュースNews
国内港湾、客船受け入れは地元への説明を重視
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたクルーズ産業について意見交換するため、スマートクルーズアカデミー(主宰:大阪大学・赤井伸郎教授)は5月29日、第2回となるオンライン会議「クルーズ振興のための情報共有サロン型ONLINEコンファレンス」を開催した。会議は、国土交通省、自治体の港湾関係者、クルーズ船社、観光・旅行関係者など約70人が参加した。
クルーズ客船を誘致している国内各港からは、コロナ収束後の取り組みについて、地元住民に安心、安全を理解してもらう説明を重視する声が相次いだ。
第一部では、大阪経済法科大学の池田良穂客員教授が客船「ダイヤモンド・プリンセス」(115,906トン)での新型コロナ感染拡大の経緯を説明。「客船は軽症者の隔離に向いている」と述べた。池田教授が事務局長を務める日本クルーズ&フェリー学会で客船での隔離の有効性で提言していることも紹介した。今後については「米国人はクルーズがコストパフォーマンスの高いレジャーだと認知している」として、収束後に復活する考えを示した。
第二部では国内各港が現状を説明。酒田港は、外航クルーズ船誘致部会を設置して官民で誘致し、2019年は客船が8回寄港し、20年は11回の予定だった。コロナ収束後の客船寄港については、「客船の乗客や乗員が山形県内を周遊することについて、市民が不安に思うことが懸念される」との考えがあることを示した。加えて「寄港の際、船内で集団感染が発生してしまった場合、本県で患者を受け入れられるかどうか。新型コロナに対応した検査、治療体制が不足して地域医療のひっ迫につながることもある」とした。「住民、乗客、乗員にとって安全、安心な受入体制を検討する必要がある」と述べた。
清水港は、清水港客船誘致委員会が今年4月に創立30周年を迎えた。客船寄港が19年41回、今年は70回を予定していた。国際旅客船拠点形成計画として、清水港ではゲンティン香港と連携して旅客施設を整備している。客船受け入れのため人材を育成していることも挙げた。コロナの影響は「今年の寄港は7割以上中止」と大きく、収束後に誘致を進めるためにも、「(地元の)不安払しょくのために広報する必要がある」と重視した。
油津港は宮崎県日南市担当者が概要を紹介。17年は寄港数26回だったが、18年11回、19年8回と減少。中国からのショートクルーズでは、日本で寄港する港が限られるため、油津港への寄港が減少したと分析。ファーストポートとして受け入れられる体制を整備して、今後整備を表明していたところだった。今年は15回寄港する予定が現在はゼロだという。油津港での感染症対応は、保健所主催の感染症発生時対応訓練を2回実施。MERS(中東呼吸器症候群)のような感染者が少人数の事態を想定した訓練という。
沖縄県港湾に関しては内閣府沖縄総合事務所担当者が説明。19年に沖縄県を訪れた外国人観光客の約43パーセントが客船でだった。那覇港は19年の寄港回数が国内トップで、県内では石垣港、平良港、中城湾港などにも寄港している。コロナ収束後の寄港再開については、「船社側と港側とがセットになって取り組まないといけない」と、両者の連動が必要との認識を示した。
パネルディスカッションでコロナ収束後について、酒田港は「まず関係者と意見交換して現状把握したい。寄港再開できるよう機運醸成を図りたい」と述べ、清水港は「静岡市ではコロナで客船寄港についてネガティブな意見は多くない。丁寧に対応を説明することで理解が得られていると思う」とした。油津港は「船社からの対策を受けて、地元に対応を説明し、安全、安心を訴えたい」、沖縄県は「地域とコミュニケーションをとるためにも、安全対策など必要な情報をタイムリーに提供して受け入れ環境を作りたい。要望がでれば、対応策を検討していく」とした。
運航再開されてから次に行うステップについてで、酒田港は「国の方針が判明しないと難しい。地元市民が歓迎しているかどうか」とした。清水港は「住民がどれだけ安心して受け入れてくれるか。今まで客船寄港時は、報道機関に(入港日時や本船概要など)案内していたが、今後は安全対策の取り組みをどれだけうまく伝えられるかが重要だ」との考えを示した。油津港は「船社の対応、港側の対策など地元で説明会を開いて地域の理解を得たい」と語った。沖縄県は「乗客の観光地ツアーでは、安全対策がとられているところを観光してもらうとか、感染のリスクを低減させる対応をとっていく。最初はリスクを抑えた受け入れから始まるだろう」と話した。