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クルーズ&フェリー学会、客船感染拡大防止で提言
新型コロナウイルスがクルーズ客船で感染拡大し、クルーズ産業に大きな影響を及ぼしているため、海事関係の専門家で構成するグループが先ごろ、「クルーズ客船の新型コロナウイルス等感染防止についての提言」をまとめた。
客船「ダイヤモンド・プリンセス」だけでなく、世界で運航する客船内で新型コロナウイルスの感染が拡大し、運航中止に追い込まれるケースが増加している。クルーズ産業や、客船を建造する造船業にも影響を及ぼすため、日本クルーズ&フェリー学会(会長=梅田直哉大阪大学教授)と大阪大学海事戦略研究イニシアティブは先ごろ、客船内の感染症対策で勉強会を開催した。同勉強会の結果を基に、両者はさらに専門家による緊急検討作業グループを設け、客船内での感染拡大防止で提言をまとめた。新型コロナウイルスは主に接触感染、飛沫感染(中国の事例ではエアロゾル感染があるとも言われる)で、ノロウイルスでは空気感染もあるとされる。今回の提言は主にエアロゾル感染と空気感染が対象。提言は、現存船と新造船(または改造船)で分けて示した。
現存船で、船室が独立空調の場合は、換気系統に配慮するほか特段の対策は必要ないとした。この独立空調は、概ね2010年以降の建造船で主に採用されているファンコイル・ユニット方式のこと。現存船の船室が独立空調でない場合は、感染した空気を船内で循環させないために、船内循環の排気リターンラインを遮断する方法をマニュアル化して船内や船社に常備。船内に感染者が出た場合は、感染者を船内病院に併設された病室に隔離するとともに、すべての船室の排気リターンラインを乗組員がすみやかに遮断することとしている。
新造船または改造船については、次のような措置を施すことを指摘。①ファンコイル・ユニット方式で船室の空調を独立。②船室入口に空気調節のための前室を設け、その両側の扉を気密かつインターロック機能を持たせる。③船室が陰圧・陽圧されているかを確認するため、船室内に圧力センサーを設置して、船内で集中的に圧力状況が把握できるようにする。また吸排気口にHEPAフィルター(高性能フィルター)を装備してバイパスラインとする。④感染者が出た船室では、船室内の排気風量を増やすことで陰圧化を実施。⑤非感染者の船室内では、船室内の新鮮な空気量を増やすことで陽圧を施す。⑥感染者発生時の船内の給食は、前室内の棚での受け渡しとして、給食者と居室者の接触を避ける。これらが実現できれば、大規模感染が発生した場合、病院船としての用船も可能との見方も示した。また船級協会などの第3者機関から取得した認証を、旅行代理店やクルーズを利用する乗客などにも公表できるようにもする。船内で感染症の対策がどの程度とられているかを示すことで、対策が十分とられていない他船と比べた場合、優位性をユーザーに対してアピールできるとメリットも付け加えている。