空と海の間に
これまで数多くのクルーズに参加したジャーナリストがつづる、
時に泣けて時に笑えて存分に役に立つ、クルーズ・エッセイ。
【空と海の間に】第7回テーマ:“夜型”の人でも対応できるクルーズ中の体調管理法
自慢にならないが、私はめっぽう朝に弱い。大学を卒業して、出版社に就職して以来、夜遅くまで会社に残って原稿を書くのがほぼ全員の働き方だった。その後、フリーランスで編集&執筆の仕事をしても同じような時間帯で働いた。
時代も変わって、出版社が残業時のタクシー代を気前よく払ってくれるご時世も終わり、朝型の生活に変更した人も多いが、私の場合なかなか生活改善ができない。
いまだに朝早く起きれないし、最低7時間はまとめて寝られないと、一日中偏頭痛に悩まされることになる。日常生活なら、偏頭痛の薬や仮眠でなんとか調整するが、クルーズの取材が意外に難しい。
というのも、客船では、朝の放送、レストランでの朝食時間、寄港地ツアーの出発など、いろいろなものの時間設定がかなり早い。陸上ならのんびり起きて、朝食と昼食を兼ねたブランチという手もあるが、客船の朝食は遅くても10時くらいまで。身支度を整えるのを考えると8時起床だし、寄港地ツアーの集合も早目の7~9時に設定される場合も多い。
恐らくクルーズは「朝型」の人の方が楽しめるんだろうなとしみじみ思う。早く起きて日の出を見ながらデッキを歩いたり、潮風を感じながらヨガをしたり、まだ人の少ない船内施設を占領できる。日本船なら展望浴場で外の景色を眺めながら朝風呂もかなう。
一日だけなら私でも、どうにか早起きできそうだが、クルーズは短くても数日間続く。
朝早めに起き、寄港地へ。そして船に戻って夜はディナー、ショー、バーめぐり、夜中のディスコと続く日もある。私だともう夕食中に充電切れになりそうだ。
体力もさほどない私が編み出した苦肉の策はいくつかある。まず朝、寄港地ツアーや目当てのイベントが早い時。そんな時は朝食のルームサービスを、客室を出る1時間前にオーダーする。ノックで目が覚め、準備しながら朝食もさっと食べられるので、ギリギリまで眠っていられる。
寄港地ツアーなどから帰ってきたら、夕方にシャワーを浴びて1時間ほど仮眠をする。これで夜も少し遅くまで過ごすことができる。バーなどで盛り上がって寝室に戻るのが12時を過ぎても、顔だけ洗ってベッドに潜り込めばいい。
日本人は眠る前に入浴したい人が多いと思うが、西洋人の多くは“夜は食事やお酒、ダンスなどを楽しんで、夜を終わらせる”。そのために夕方シャワーを浴びて、ドレスコードがなくても、ぱりっとした服に着替えて、食前酒などの夜モードへ切り替える。クルーズ中は私も多くの西洋人を見習って、シャワーと1時間ほどのお昼寝で夜に備える。
海外で外国船に乗る機会も多いので、体調と時差、偏頭痛発作にはかなり気を使う。機内やクルーズ中どうやって睡眠時間を確保するか、体調を崩さないか……。
フライ&クルーズで船に乗られている方にも、残念ながら途中で体調を崩す人が意外にいる。
私のおすすめをいくつか。飛行機と客室の乾燥に気をつけること(機内と船内で眠る時はマスク着。安眠用に耳栓も)。可能な限り前泊などをして現地時間や航海エリアに身体を慣らす。船上や船内の温度差で身体を冷やさないようにするのにも、とても気をつけている。寄港地ツアーも雨やバスの空調で冷えることもあるから、ストールやカーデガンを常にバッグに入れているし、最近はトップスの下に着られる薄い長袖のTシャツを入れていることも。
「身体を冷やしたかも」という時はポーチに入れている使い捨てカイロや葛根湯、ビタミンCとD、飴や喉スプレー(どれだけ入れているのでしょうか)を駆使する。
そして、皆さんにもおすすめだが、船上で楽しいイベントが山積みでも、疲れや違和感を感じたら、クルーズ中に半日でもいいので“休憩日”を作るとだいぶ違う。
といいつつ「午後2時までオープンしている朝食レストラン」や「朝、航海して、午後から次の朝まで港に停泊するクルーズ(以前そんなスタイルに挑戦した客船があった)」のような、「夜型」人用客船もまた再登場するといいなと思ったりする。
藤原暢子〈ふじわら・のぶこ〉
クルーズ・ジャーナリスト。これまで国内外120隻以上の客船・フェリーで約100カ国をめぐる。長崎市生まれ。4人姉妹の4女ながら、五島列島にある先祖のお墓参り担当。