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HOME > 特集INDEX > 特集「アフターコロナのクルーズ新時代に向けて」第1回:クルーズ業界におけるコロナ感染拡大のインパクトと各社の対応
CRUISE最新号
特集「アフターコロナのクルーズ新時代に向けて」

第1回
クルーズ業界におけるコロナ感染拡大のインパクトと各社の対応

半年前、誰がこのような事態になることを予想できただろうか。2019年12月に中国に端を発した新型コロナウイルスは、あっという間に世界各国を飲み込んだ。

ことクルーズの世界に関しては、2月頭に横浜発着クルーズを実施していた「ダイヤモンド・プリンセス」船内で多数の感染者が発生したこともあり、世界中の注目が集まる事態となった。私自身、2月中旬に改装中の飛鳥Ⅱを取材するためにシンガポールに出張に行ったが、乗り合わせたタクシーの運転手さんまでが「ダイヤモンド・プリンセス」の名前を口にしていて、日本のみならず世界中で大きなインパクトを与える事態になったことを肌身で感じた(飛鳥Ⅱの改装のレポート、ならびにダイヤモンド・プリンセスの検証記事はクルーズ6月号に掲載している)。

当初、この影響はアジアにとどまっていた。2月下旬にかけて、今春、特にゴールデンウィークを中心に多数予定されていた外国船による日本発着クルーズのキャンセルが続々と発表された。2010年頃から本格的にスタートした外国船による日本発着クルーズは、これまでの10年ずっと右肩上がりだったが、それがこのウイルスにより、すべてが白紙になってしまった。外国船のみならず、2月下旬には改装直後で大きな期待を背負っていた飛鳥Ⅱ、にっぽん丸など日本船の今春のクルーズもキャンセルが発表された。

3月に入ると、その影響はもはやアジアだけでなく、欧州にも波及した。まずは欧州におけるクルーズの拠点のひとつであるイタリアで感染が拡大。3月下旬にはクルーズの最大市場を擁する米国でも感染が拡大し、多くの船会社が運航を停止した。当初、多くの船会社が4月いっぱい、もしくは5月中旬までの運航停止を発表していた。それが各国での感染拡大を受け、じわじわと運航停止期間を延長している。

現在、欧州を中心としたクルーズは6月末までの運航停止を発表している船会社が多い。米国においては、CDC(疾病対策予防センター)が全クルーズ船に対し、7月24日までの運航停止令を発令、これに伴いクルーズはカーニバル・クルーズ・ラインやノルウェージャンクルーズライン、ロイヤル・カリビアン・インターナショナルなど多くの船会社が7月末までの運航停止をアナウンスしている。果たしてこの期限が過ぎた後に無事にクルーズが再開できるかどうかが、現在のクルーズ業界関係者ならびにクルーズファンの最大の関心ごとではないだろうか。

CDCによる客船の運航停止を指示したウェブサイト

クルーズの再開に向けて、船会社や関係者が、指をくわえてみているわけではない。例えばアジアクルーズの雄であり、急速に船隊を拡大させたゲンティンクルーズラインは、4月8日にはいち早く独自のガイドラインを発表、感染拡大防止への徹底を宣言した。こうしたガイドラインの策定は現在各船会社でも鋭意進めており、5月21日にはプリンセス・クルーズも発表している

こうした動きは日本でも活発化しており、5月14日には日本外航客船協会(JOPA)が感染拡大防止のガイドラインを発表した。同日にはクルーズ業界のみならず、日本旅行業協会、全国旅行業協会観光による「旅行業における新型コロナウイルス対応ガイドライン(第1版) 」など、旅行・交通関連団体が多数のガイドラインを発表。これらは実に具体的、詳細な感染予防策を提示しており、クルーズに関しても、旅行全般に関しても新時代に突入することを予感させるものだ。

感染症対策の一方で、財政面の対策も鋭意進められている。ノルウェージャン・クルーズライン・ホールディングス(NCLH)は今年第1・四半期(2020年1月~3月)において、新型コロナウイルスの影響により16億ドル超の減損損失を計上する一方で、増資などで約37億ドルの資金を調達したと発表した。カーニバル・コーポレーションは大規模なレイオフ(一時解雇)を実施し、また64億ドルの資金を調達したと発表した。現在、フィリピンのマニラ沖には20隻以上、米国のマイアミ港や英国のサウサンプトン港の沖でも多くの客船が停泊している。数千人が乗れる大型客船は、乗務員も千人~数千人単位でいる。彼らの健康管理や処遇はもとより、今後の雇用や賃金の調達も、船会社の直近の課題だ。

船会社はこうした安全基準の策定、財政面の対策などを実施する一方で、主にSNSを中心に乗客、クルーズファンに対する働きかけを盛んに実施している。カーニバル・クルーズラインやホーランド・アメリカ・ラインは「We will be back」をキャッチフレーズに、クルーたちの笑顔、歌声を込めたyoutubeをアップしている。オーシャニアクルーズやキュナードラインでは、自社の名物料理のレシピを公開。リバークルーズ最大手のバイキング・リバークルーズは「バイキングTV」という自社番組をスタートさせ、寄港地のコンテンツなどを配信している。日本船でも、郵船クルーズは「おうちで飛鳥Ⅱ」と題し、塗り絵や飛鳥Ⅱ名物の料理のレシピを動画で紹介している。

Youtube We'll Be Back
おうちで飛鳥II

こうした動きにクルーズファンも呼応している。弊誌がクルーズ専門誌だというのもあるだろうが、読者からの投稿は、圧倒的に「クルーズが再開されたらぜひ乗りたい」という声が多い。ダイヤモンド・プリンセスに乗船し、隔離の対象だったという読者からも複数の投稿をいただいているが、そのすべてが「クルーは大変よくやっていた。クルーズが再開されたらぜひまた乗船したい」というものだったのには、編集部一同驚き、そして感動した。

クルーズが再開されても、その道のりは平たんではないかもしれない。日本政府の専門家会議が「新しい生活様式」を発表したように、このクルーズ業界にも「新しいクルーズ」が求められていきそうだ。業界関係者や識者はそれに対し、どう考え、どう対処するべきだと考えているのだろうか。次回からキーパーソンへのインタビューを中心にお届けしていこう。



文:吉田絵里(CRUISE編集長)





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