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HOME > 特集INDEX > 特集「アフターコロナのクルーズ新時代に向けて」第7回:クルーズバケーション木島榮子社長に聞く、コロナ禍の影響、今後のクルーズ振興の行方
CRUISE最新号
特集「アフターコロナのクルーズ新時代に向けて」

第7回
クルーズバケーション木島榮子社長に聞く、
コロナ禍の影響、今後のクルーズ振興の行方

クルーズバケーション 木島榮子代表取締役社長

黎明期からクルーズの販売を手掛け、日本にクルーズを根付かせた先駆者の一人であるクルーズバケーションの木島榮子代表取締役社長。新型コロナウイルス感染拡大の影響を多分に受けたクルーズ業界について、同氏はいまどう感じ、そして今後どうすべきだと考えているのだろうか。話を聞いた。

コロナ禍の影響

――まずは御社の現状からおうかがいできればと思います(※クルーズバケーションは日本発着クルーズを含む多くのクルーズの販売を手掛ける専門の旅行会社であり、ラグジュアリーなドイツ船社ハパグロイド・クルーズの日本地区販売総代理店も務めている)。

木島榮子代表取締役社長(以下略) 「ダイヤモンド・プリンセス」船内で新型コロナウイルスの感染が明らかになってから、ダイヤモンド・プリンセスはもちろん、「クイーン・エリザベス」など、日本発着クルーズの運航が相ついでキャンセルとなり、予約されていたお客さまはすべてキャンセルになりました。2020年のゴールデンウィークシーズンは弊社でも多くの予約があり、大きな影響を受けました。

米国ではCDC(アメリカ疾病予防管理センター)が100日間の運航停止を発表し、すべての客船がストップしました。その前のことですが、弊社で手掛けているディズニークルーズラインでは、3月には運航はしていたものの日本人乗客は乗船できないという事態も起こりました。

ハパグロイド・クルーズに関しては、3月にグループや個人の予約が入っていたものの、欧州で感染が広がり、3度寄港地を変更したのちに、結局クルーズキャンセルになりました。 個人の方は来年のクルーズに変更されましたが、グループの方は半分がキャンセル、残り半分の方が来年のクルーズに振り替えてくださいました。

海外の客船格付け本で最高峰の評価を得るハパグロイド・クルーズの客船「オイローパ2」

こうしたフライ&クルーズの方はもちろん、日本発着クルーズに予約されたお客さまに対しても、弊社ではフューチャークルーズ(※先々のクルーズ)に予約を振り替えることを提案していますが、やはり辞退される方も多くいます。予約を振り替える方は2割弱程度でしょうか。クルーズのリピーターが多い米国でも6割程度と聞きます。

いずれにせよ、日本発着やフライ&クルーズは、今年は厳しいでしょうね。海外旅行が再開されてからになると思いますし、まずは日本船の再開に期待しています。

――木島社長は長らくクルーズ業界にいらっしゃいますが、過去にこのような状況はあったのでしょうか。

初めてです。もちろん以前にもSARSなどありましたが、その時は日本発着クルーズ等なくクルーズ人口も少なく、現在のように国境を越えた移動がここまで制限されるということ自体が初めてです。しかも日本では残念ながらクルーズに対する悪い印象の報道が広まってしまいました。この影響は大きいですね。

だからこそ今後は、クルーズそのものが「新しい生活様式」をどう取り入れていくか、それが一番重要だと思います。船内の楽しみであるエンターテインメントはどうするか、レストランでどうソーシャル・ディスタンスを確保するかなど。そして各客船会社の船内感染防止対策や安全対策をお客さまにしっかり伝えることも重要です。

今後の注力商品とプロモーション

――御社が総代理店を務めるハパグロイド・クルーズは、もともとスペースレシオ(※乗客1人当たりの空間を表す指標)が高く、ソーシャル・ディスタンスをとりやすいかもしれませんね。

ハパグロイド・クルーズを筆頭に、シーボーン・クルーズやリージェントセブンシーズクルーズなど、小型ラグジュアリー客船の方が、そうした距離は取りやすいと思います。ハパグロイド・クルーズの客船は全室バルコニー付きですし、クルーと乗客1対1のパーソナルなサービスもできる。販売もまずはラグジュアリー客船が中心になるかもしれません。

ハパグロイド・クルーズの「オイローパ2」などラグジュアリーな客船は、もともと乗客一人当たりの空間が広い

こうしたラグジュアリー船は、クルーズ代金はカジュアル船の2~3倍ほどします。その点ではマーケットが限られてくるとは思います。ただ私は、今後は旅行形態が変化し大型の団体旅行は少なくなっていくのではと思っています。個人旅行や、グループでも10人以下のグループが増えてくるのではないでしょうか。

――御社でも「密にならない旅」をテーマに、神姫観光バスの「ゆいプリマ」とのオリジナル企画を発売されています。

そうですね、まずは密にならない国内旅行からと思っています。ゆいプリマはゆったりとしたラグジュアリーなバスです。そのほか、日本船のショートクルーズとこのバスを合わせたツアーなども考えています。リゾート滞在型の商品も提供しています。

定員が18名のラグジュアリーバス「ゆいプリマ」。水戸岡鋭治氏がデザインを手がけたことでも知られる

――一方でクルーズ販売は引き続き続けていかれると思いますが、今後お客さまに対して、どういうアプローチが必要だとお考えでしょうか。

まずはクルーズがどういう旅行か、そして船内でも各寄港地でも、安全対策がしっかりと取られているということを伝えていく必要があります。それには船会社や旅行会社だけでなく、港湾関係者など皆が協力しあってアピールしていく必要があると思います。業界的にはJOPA(日本外航客船協会)やJATA(日本旅行業協会)にぜひ音頭をとってアピールしていってもらいたいと思っています。

今後、国内旅行を対象としたGo Toキャンペーンが予定されていますが、これにはぜひ「船での国内旅行」である日本船でのクルーズもぜひ入れてもらいたいと思っています。そして船は安全だとアピールできればと思っています。

外国船の日本発着クルーズに関してはすぐには難しいのかもしれませんが、来年のゴールデンウィークまでにはぜひ復活してもらいたいですし、これもGo Toキャンペーンの対象になるといいなと思っています。

ダイヤモンド・プリンセスの功績とクルーズの良さ

――木島社長はダイヤモンド・プリンセスが日本発着クルーズを開始した当時、販売などを手掛けるカーニバル・ジャパンの社長をされていました。ダイヤモンド・プリンセスに対する思い入れも強いのではないでしょうか。

思い入れはありますね。日本でクルーズがここまで定着したのは、ダイヤモンド・プリンセスのおかげだと思っています。それまで手の届かない旅行というイメージだったクルーズを、ここまで身近にしたのはダイヤモンド・プリンセスのおかげです。こんなに楽でたのしい旅行はないということ、それから海から見る日本はこんなにも素晴らしい景観に富んでいるということも教えてくれました。

だからこそ、プリンセス・クルーズは今が正念場で、がんばってほしいと思っています。そのためには、これまでの売り方を変えるのも必要ではないかと思います。思い切ってインサイドを売るのをやめ、定員も現在の2700人から2000人程度に減らし、サービスもアップグレードするのがいいのでは。その分クルーズ代金は上がりますが、それでもリピーターの方は来てくれるのではないかと思います。

そのぶん安心・安全で楽しい旅行を提供していることを積極的にアピ―ルする必要があります。

ダイヤモンド・プリンセスでは新型コロナウイルスの感染者が出ましたが、すでに消毒作業も終わっています。そもそも感染が発生したときは船側も、日本側の関係者も初めての感染症対策に最善の対処をしたと思いますし、それを胸を張ってもっとアピールしてもいいと思うんです。船長は国に帰ってから、表彰されたと聞きましたが、そういうことはなかなか伝わりません。決してダイヤモンド・プリンセスが悪いことをしたわけでないですし、誰にとっても初めての事態の中で、関係者の方々は精一杯のことをしたと思います。

――編集部にも乗船されていた方からお便りなどが届いていますが、悪くいう人がいないのには驚きました。

そうなんです。クルーは皆がんばってくれたという方が多く、リピーターの方はまた乗りたいと言ってくださいます。

――こういうエピソードに触れるにつれ、クルーズはリピーターの多い、独特な旅行スタイルだと感じます。

そうですね。船は人と人との繋がりができる、特別な空間です。同じ船に乗った人同士、とても人間的なコミュニケーションができ、対等な立場で友達になれます。

しかも青い海、青い空に囲まれながら、海風を感じて健康になれる場所でもある。こうしたクルーズの良さは、これからもしっかりと伝えられればと思っています。

 

 

インタビュー:吉田絵里(CRUISE編集長)
2020年6月10日 電話にて実施

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